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電力自由化ってなんだ?契約先変更のきっかけは「住み替え」?

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電力自由化ってなんだ?契約先変更のきっかけは「住み替え」?

2016年4月1日に電力の全面自由化がスタートした。これまで一般家庭では、東京電力などの地域の電力会社としか契約できなかったが、さまざまな事業者が参入することで多様な料金メニューも提示されるようになった。まず電力自由化について解説したうえで、消費者が契約先の変更についてどう考えているのか、リクルート住まいカンパニーの調査を見ていこう。【今週の住活トピック】
「電力会社/電力の契約先の変更に関する意識調査」を実施/リクルート住まいカンパニー電力自由化とは、低圧電力の小売まで全面自由化になったこと

電力の自由化は、正しくは「電力の小売全面自由化」という。
電力の自由化は、発電事業者の新規参入を認める「発電の自由化」と、どの小売電気事業者とも契約できる「小売の自由化」が両輪だ。小売りの自由化は、実は2000年から段階的に進められていた。

2000年3月の「特別高圧」(大規模工場やデパート、ホテル、オフィスビルなど)から電力の小売が自由化になり、2004年4月・5月に「高圧」(中小規模工場や中小ビルなど)に拡大した。
そして、いよいよ2016年4月に契約電力50kW未満の「低圧」電力の一般家庭でも、自由に小売電気事業者を選べるようになった。なので、「電力の小売全面自由化」というわけだ。

どの小売電気事業者と契約しても、既存の電力会社の送配電線を使用して電気を供給する(新電力会社は使用料を支払う)ので、届く電気の質に違いはない。安定した電力の供給を確保しながら、利用者の選択肢を広げ、事業者間の競争によって電気料金が下がることなどが期待されている。

電力会社を切り替えるきっかけは「住み替え」?

電力会社の切り替えの選択肢は広い。既存の地域の電力会社に加え、業務用電力の小売りから参入していた新電力会社やガス会社、石油会社、通信会社などさまざまな事業者が小売電気事業者として参入している。
では消費者は、いつ電力会社の変更をするのだろうか?

リクルート住まいカンパニーが「電力会社/電力の契約先の変更に関する意識調査」を2016年2月に実施し、3月に公表した。その結果から「契約先の変更意向」を見ると、「住み替え検討層」(2016年4月以降半年以内に転居を検討している人)では、83.1%が変更検討をしており(契約済みも含む)、「一般層」(2016年3月から1年以内に転居を検討していない人)の70.3%に比べて、10ポイント以上高いことが分かった。

その理由は、「変更のきっかけ」(画像1)が影響している。「一般層」では、きっかけの最多が「電力の小売り自由化が始まるとき」49.3%だったのに対し、「住み替え検討層」では「住み替え/引っ越しをするとき」と回答した人が最多で78.4%にのぼっている点が注目される。

【画像1】契約先を変更するきっかけとなりそうなこと(きっかけとなったこと)。複数回答、上位3位を抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「電力会社/電力の契約先の変更に関する意識調査」)

【画像1】契約先を変更するきっかけとなりそうなこと(きっかけとなったこと)。複数回答、上位3位を抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「電力会社/電力の契約先の変更に関する意識調査」)

電力契約先に変更意向がある人を対象に、契約先を選択する際の重視点を聞いたところ、「料金の安さ」が「住み替え検討層」で90.4%、「一般層」で87.9%と圧倒的に多かった。

一方で、変更にあたって分からないこと・困っていることを聞くと(画像2)、自分に合った電力会社・料金プランが分からない、料金プランの比較方法が分からない、電気料金がどれほど変わるか分からないなどがいずれも半数を超え、消費者の困惑ぶりがうかがえる結果となった。

【画像2】契約先を選ぶときに重視するもの。複数回答、上位3位を抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「電力会社/電力の契約先の変更に関する意識調査」)

【画像2】契約先を選ぶときに重視するもの。複数回答、上位3位を抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「電力会社/電力の契約先の変更に関する意識調査」)

電力会社を切り替えるにあたっては、ここに注意

電気料金の価格比較サイトなどもできていて、各小売電気事業者の違いが分かりやすくはなってきているが、まずは各家庭でいつごろ、どの程度の電気を使っているかを確認することが大切だ。また、小売電気事業者ごとに他のサービスとのセット販売をしているので、どの程度利用するサービスかどうかなども確認したい。

実は、2017年4月には「都市ガス小売自由化」も控えている。このころに、再度ガスを含めた料金プランが提示される可能性もあるので、こうしたことも見極めて冷静に判断してほしい。

さらに、マンション居住者には別の注意点もある。

マンションでは、共用部の電力を管理組合が、各専有部の電力を各住戸が、それぞれ既存の地域電力会社と契約するのが一般的だった。しかし、「高圧」が自由化された段階から、小規模なものを除いた居住用のマンションで、「マンション高圧一括受電」といった契約が増えるようになった。マンション全体で一括して新電力会社と高圧電力の契約を結び、高圧電力を「低圧」変換したものを各住戸などに供給するものだ。

高圧と低圧の電気料金の差額によって、電気料金を引き下げるという仕組みだが、全住戸がその電力会社と契約することが前提だ。「高圧一括受電」を契約しているマンションはまだそこまで多くはないが、すでに住んでいるマンションが「高圧一括受電」契約をしている場合、自分のところだけ変更するということはできない。また、高圧から低圧に変換する変圧器に初期費用がかかるため、マンション全体で早期に解約すると、むしろ割高になってしまうケースもある。

逆に、マンション全体が高圧一括受電契約をしていない場合は、マンション居住者それぞれが自分に合ったプランを選ぶという選択肢に加え、マンション全体で高圧一括受電契約をするという選択肢もある。

長期的に見ると検討すべき条件が多い状況なので、しっかり見極めて電力会社を選ぶこと、電力会社を変更した後でも柔軟に切り替えができるかどうかも考慮することなどに注意してほしい。

●「電力小売り自由化」などに関連する記事
・「新電力トリプルセット割」ってなに? 電力会社選びの注意点
・「電力自由化」はどれだけオトク? 8社で検証してみた
・2016年から始まる電力自由化、今できることは!?
・2017年4月、都市ガス自由化で“電力の逆襲”が始まる!?●SUUMO電気代診断元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109294_main.jpg

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5軒に1軒は床下にシロアリが潜む!? その被害と対策は

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5軒に1軒は床下にシロアリが潜む!? その被害と対策は

春から初夏にかけて、自宅のまわりで羽アリの姿を見かけることはありませんか? その羽アリ、実は自宅に「シロアリ」がいるサインかも。生活習慣病のようにジワリと家をむしばんでいく「シロアリ」が、わが家にいるかどうかをチェックする方法から、防ぐための暮らし方のコツ、プロに駆除を依頼する場合の費用の目安までを聞いてきました。
日本の家の5軒に1軒はシロアリがいる! その被害は?

そもそもシロアリには、「怖い」印象はあるものの、その姿を見たことがある人は少ないはず。家屋の被害も減っているのではないでしょうか。

「実はそうでもないんです。2013年に国土交通省の補助事業として行われた『シロアリ被害実態調査報告書』よると、日本の住まいの5軒に1軒は、床下にシロアリがいるといわれています。築年数にほぼ比例するかたちで被害も増えていくのですが、木造在来工法、2×4、プレハブなど、建物の構造には関係ありません。鉄筋鉄骨の建物、マンションでもシロアリ被害はあるんですよ」と話してくれたのは、シロアリの駆除などを手掛ける、テオリアハウスクリニックの営業部技術開発課の山形翔平さん(以下同)。

【図1】床下蟻害の発生割合。(出典:2013年/国交省補助事業「シロアリ被害の実態報告書」より、編集部作成

【図1】床下蟻害の発生割合(出典:2013年 国交省補助事業「シロアリ被害実態報告書」)

ただ、シロアリは通常は土のなかで暮らしていて日光や風に弱く、日ざしにあたると死んでしまうごく弱い生き物。なので、日ごろ、見かけることはほとんどないとか。しかし、ひとたび、巣をつくりはじめると被害は甚大です。「日本にいる主なシロアリは、ヤマトシロアリ、イエシロアリという在来種に加え、外来種のアメリカカンザイシロアリが確認されています。被害が大きいのはアメリカカンザイシロアリで、場合によっては家が取り壊しになることもあるくらい。一般的に生息するヤマトシロアリやイエシロアリでも柱や壁をボロボロに食いつくします」といいます。

初期の自覚症状が出にくいところ、進行するとぼろぼろになるという点では、家の「ガン細胞」ともいえるかもしれません。

4〜6月は、シロアリの繁殖期。羽アリを見かけたら要注意

そんな怖〜い「シロアリ」、家にいるかどうか、素人でも分かるのでしょうか。

「ひとつの目安となるのが、羽アリの存在です。4月末〜6月になると、シロアリが成長して次の巣をつくるために、羽アリとなって飛び出すんです。ただ、家のなかで羽アリを見かけたら実は末期症状。かなり立派な巣があり、柱や壁などがボロボロになっている可能性は高いです」(山形さん)

ほかにも、シロアリがいるかどうかの見分け方として、床下や基礎などに土でつくった筋のようなものがある、床や壁を叩くと軽い音がする、床が不自然にフカフカとした感触で沈む……、などをあげてくれました。

「シロアリは、たいていの土のなかにいます。湿気を好んだジメジメしたところを好み、日を避けるため、土のトンネル=蟻道をつくって、食べ物であるセルロースという成分が含まれる木材や紙などを探すんです。この蟻道は外から見ると筋状になっているので、これがひとつの目安になります。実はこの蟻道、断熱材のなかからも発見されているんですよ」

断熱材のなかにも道をつくるなんて、シロアリ恐るべしです。

【図2】シロアリの侵入経路(画像提供:テオリアハウスクリニック)

【図2】シロアリの侵入経路(画像提供:テオリアハウスクリニック)

【画像1】床下にできた蟻道。基礎部分にきれいな土の筋道ができている(画像提供:テオリアハウスクリニック)

【画像1】床下にできた蟻道。基礎部分にきれいな土の筋道ができている(画像提供:テオリアハウスクリニック)

【画像2】断熱材のなかにできた蟻道。日光や通風もなく、暖かいため、シロアリにとっては格好の隠れ家(撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】断熱材のなかにできた蟻道。日光や通風もなく、暖かいため、シロアリにとっては格好の隠れ家(撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像3】シロアリに食べられた木材。手で持ってみると想像以上に軽く、スカスカのスポンジのよう(撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像3】シロアリに食べられた木材。手で持ってみると想像以上に軽く、スカスカのスポンジのよう(撮影:SUUMOジャーナル編集部)

被害の発生場所で多いのは、玄関まわり。そして湿気を好むため、キッチンや洗面所、バスまわりだといいます。
「玄関まわりは、水を使ってお掃除をする人が多いので湿度もありますし、土と木材が混ざっている構造なので、被害が発生しやすいんです。水まわり、特に築年数の古い在来のお風呂などは、土の上に直接、タイルという構造になっていることもあり、シロアリ被害の多い場所です」と話します。

家のまわりにダンボールや木材を放置しない!

それでは、家庭でできるシロアリを予防・駆除するための方法を聞いてみました。

「家の周辺にシロアリのエサとなる木材やダンボールを置いておかないこと。特に土壌に直接、というのは避けたいですね。あとは、通風口まわりにモノを置く人がいますが、これだとせっかくの通風口がふさがれ、床下に湿気がこもってしまいます。気をつけてほしいですね」と話します。仮に、家のまわりに木材などを置く場合は、ブルーシートなどを敷いたうえに置くなどの対策をするとよさそうです。

最近ではシロアリ対策の意識も浸透していて、「被害が出る前に、防蟻処理を」という人も多いのだとか。一般に新築住宅であれば、防蟻剤がきれるのが5年なので、5年を目安に定期的に行う人も多いそうです。

「シロアリの駆除・予防の金額ですが、当社ですと床面積1m2あたり2500円〜。防蟻処理をするのは1階の床下のみですので、1階の床面積(40m2程度)とすると10万円〜でしょうか」と山形さん。駆除も予防も一律の金額だそうです。

ただ、シロアリ駆除会社に依頼するにしても、
(1)サイトなどで情報公開しているか
(2)日本しろあり対策協会に加入しているか
(3)相見積もりをとる

などして、業者を見極めてほしいとアドバイスしてくれました。

ひとたび防蟻剤を散布すると、シロアリの被害が進むことは食い止められますが、一方で食い荒らされてしまった床や壁を取り替える必要があり、そのリフォーム費用がかさんでしまうことも多いそう。それだけに、病状が進んでからではなく、「早めの検査・予防」が肝心といえそうですね。

●取材協力
・テオリアハウスクリニック
・公益社団法人 日本しろあり対策協会元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109407_main.jpg

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間取り好きに捧ぐ! 妄想を形にできる『間取りTouch+』

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特に理由はなくとも、間取図が好きな方って多いのではないでしょうか? 部屋探しのときにたくさんの間取図を見たり、家を建てるときに(建てなくても)理想の間取りを考えたりってわくわくしますよね。その間取図を簡単に作成できるアプリで、自分で間取図をつくってみました。
できることが多い故、操作に慣れるまでがちょっと大変

今回使用するのは本格的な間取りがつくれる『間取りTouch+』というアプリ。「わたし(独身アラサー女子)が住みたい部屋」というテーマでさっそくつくってみたいと思います。

【画像1】まずは最初の部屋をつくります。広さだけでなく床の模様や色まで選べます。寸法もミリ単位でさっそく本格的です。あとで細かく変えられるのでとりあえずで問題ありません(間取りTouch+キャプチャ)

【画像1】まずは最初の部屋をつくります。広さだけでなく床の模様や色まで選べます。寸法もミリ単位でさっそく本格的です。あとで細かく変えられるのでとりあえずで問題ありません(間取りTouch+キャプチャ)

【画像2】どこまで細かく表示するかの設定もできます。今回筆者は妄想を形にするだけなので寸法の表示はオフにしました(間取りTouch+キャプチャ)

【画像2】どこまで細かく表示するかの設定もできます。今回筆者は妄想を形にするだけなので寸法の表示はオフにしました(間取りTouch+キャプチャ)

それぞれ寸法や向きを自由に変えられるし、種類も豊富です。さらにさらにキッチンや浴槽などの「設備」・階段やロフトといった「構造」・ベッドやソファのような「家具」まで配置することができます。つまり、ほとんどなんでもできます。(人によっては「好みのインテリアがない」「壁をカーブさせたい」という多少の不満はあるかもしれません)

ただ、できることが多い故に、操作に慣れるのに少し時間がかかりました。筆者の場合、1時間半くらいもにょもにょと操作してようやく自由に動かせるように。手書きで妄想間取図を描いていたときは「リビング小さすぎた!直したい!」という場合に他の部屋との調整が大変だったのですが、アプリなのでそういった調整も簡単。

こうなってくると間取りをつくるのが楽しくてしょうがありません。夢がどんどん膨らみ、細かいところにこだわり出し、あっという間に時間が過ぎていきます。

完成後は達成感とわくわく感で胸いっぱいに。実用性も高い

そうして3、4時間かけてできた「わたし(独身アラサー女子)が住みたい部屋」がこちら! 2LDK、ウォークインクローゼット付き、U字型キッチン、独立洗面台の理想の部屋です!

【画像3】右上の洋室は仕事や趣味をする書斎、朝日で目覚めたいので寝室は東向き、ドアを開けっ放しにして風を通すのが好きなので引き戸多め、などなど筆者のこだわりポイントを随所に盛り込みました。所々サイズ感や表示がおかしいのはご愛嬌…(間取りTouch+キャプチャ)

【画像3】右上の洋室は仕事や趣味をする書斎、朝日で目覚めたいので寝室は東向き、ドアを開けっ放しにして風を通すのが好きなので引き戸多め、などなど筆者のこだわりポイントを随所に盛り込みました。所々サイズ感や表示がおかしいのはご愛嬌…(間取りTouch+キャプチャ)

【画像4】寸法の他コンセントの配置や照明の位置といった実用的なパーツも配置可能(間取りTouch+キャプチャ)

【画像4】寸法の他コンセントの配置や照明の位置といった実用的なパーツも配置可能(間取りTouch+キャプチャ)

隣の席の編集者に見せたところ「無駄が多い」「扉の向きは逆がいいのでは?」などいくつかダメだしされましたが、いいんです! 住宅の編集者らしからぬセンスでも! 私はこの部屋に住みたい! あ~~~本当に住みたい!

筆者は妄想を具現化する、という使い方でとても楽しめましたが、アプリのレビューを見てみると「コンセントや窓も配置できるため、動線との干渉具合まで分かるのが良い」「家を建てるとき、建てた後の家具の配置など、とても役に立った」「リノベーションのイメージづくりに最適だった」「新生活のイメージが湧いた」などなど実用的な使い方をしている方も多数。他には、イラストや漫画を書く方が、背景の設定や整合性をとるために利用しているという声もSNSで見かけました。
作成した間取図はjpg形式で画像として保存できるほか、そのままメールで送ったり、dropboxにアップできるのもうれしいポイント。
ただ、現在対応しているのはiPhoneのみで、Androidでのリリース予定はまだないそうです(涙)。

これから建てたりリノベーションする家のイメージ作成だけでなく、いま住んでいる家や引越し先の家の間取図を起こして、置きたい家具のサイズ感などを確認したり、アプリという手軽さから部屋探しのときの希望の間取りのイメージに使うのにもとても役に立ちそうですね。

●参考
・間取りtouch+元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109421_main1.jpg

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マンガ『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』の作者にインタビュー

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マンガ『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』の作者にインタビュー

2016年、恵比寿に首位を明け渡したとはいえ、長年、住みたい街人気NO.1に輝き続けてきた「吉祥寺」。その吉祥寺を舞台にしつつ、他の東京の街を紹介していく不動産&街マンガが『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』(講談社)。東京のあまり知られていない街の魅力から、「シェアハウス」「リノベーション」など、最近の住まい事情まで紹介しています。取材したなかでも思い出深い街、吉祥寺への思い、住んでみたい物件まで、作者のマキヒロチさんにインタビューしてきました。
雑司が谷に錦糸町、最新刊では神楽坂。紹介する街はどう決まる?

マンガ「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」の舞台は、吉祥寺の一角にある少し古めの不動産屋さん「重田不動産」。ちょいぽちゃの双子の主人公・都子と富子が、吉祥寺に住みたいと希望してきた客に対し、吉祥寺以外の街と物件を紹介するというストーリーです。今まで舞台となってきたのは、雑司が谷に錦糸町、駒沢大学、蔵前、秋葉原などと、ちょっとニッチな街ばかり。紹介する街はどのようにして決めているのでしょうか。

「庶民的な街、ニッチな街、ちょっとしゃらくさい街など、単行本になったときのバランスを考えつつ、いろいろな雰囲気の街を紹介したいと思っています。また、とりあげる街に関しては、東京の街に詳しい編集者の川田さんと相談しながら決めています」。とはいえ、どこの街でもよいワケではなく、「吉祥寺に住みたい」と思っている人を案内するわけで、独自の魅力がないとストーリーは展開できません。

驚くのが、街の良さを発見する視点です。

「初めて街を歩くときは、川田さん、『ヤングマガジン』の担当編集者2人、私の合計4人でぶらぶらしながら街を歩きます。自分だけの視点だと偏ってしまうので、他の人の視点ではどう見えているのか、どんな魅力があるのか、ひたすらメモしていますね」。初回は地図も持っていかず、写真も取らないそう。また、1回だけでなく、何度も何度も街に通い、ストーリーを練りあげていきます。

作品では毎回、その街ならではの印象的なシーンが、見開きで展開されます。キャラクターの頭越しに見える風景は、あたかもその場にいるような臨場感。「ああ、こんな街なら住んでみたいな」「新しい何かが始まるかも」というワクワク感は、読んでいるこちらにも伝わってくるようです。

「見開きのシーンは毎号欠かせないので、どの風景にするかも街歩きのときに編集者と相談したり、自分で印象に残ったシーンを選んで描いています。雑司が谷なら都電荒川線とか、やっぱり欠かせないですよね」とマキさん。

【画像1】第一話に登場する都電荒川線の見開きシーン(画像提供:講談社 ヤングマガジン編集部)

【画像1】第一話に登場する都電荒川線の見開きシーン(画像提供:講談社 ヤングマガジン編集部)

【画像2】主人公の双子はちょっとふとましい体型。ゆるーい雰囲気ながら仕事はきっちりする、ギャップが魅力。実は「あんまり美人で仕事がかっちりという人に街案内されたくない」という思いから産まれたキャラクターだそう(写真撮影:片山貴博)

【画像2】主人公の双子はちょっとふとましい体型。ゆるーい雰囲気ながら仕事はきっちりする、ギャップが魅力。実は「あんまり美人で仕事がかっちりという人に街案内されたくない」という思いから産まれたキャラクターだそう(写真撮影:片山貴博)

吉祥寺周辺で育ったマキさん。変わりゆく街、東京への思い

マキさん自身は、東京都・吉祥寺周辺で育ち、それゆえに街への思い入れは深いものがあるそう。特に、1巻目の冒頭、30年以上の歴史を持つ映画館「バウスシアター」が取り壊され、主人公たちが「吉祥寺も終わったな」とつぶやきますが、これはマキさん自身の実感がこもったセリフです。

「吉祥寺もどんどん変化していて、昔からあった店が消えて、どこの都市でもあるチェーンのお店が増えていく。 もちろん、吉祥寺への愛着もこめて、でもあまり攻撃的になりすぎず(笑)、”吉祥寺だけが住みたい街ですか?”というタイトルに行き着きました。アレ、なんだろうと思って、本を手にとってもらえたらうれしいですね」と話します。

【画像3】変わっていく街を見て主人公たちが「吉祥寺も終わったな」とつぶやくシーン(画像提供:講談社 ヤングマガジン編集部)

【画像3】変わっていく街を見て主人公たちが「吉祥寺も終わったな」とつぶやくシーン(画像提供:講談社 ヤングマガジン編集部)

作品中、ほかにもたくさんの名言が登場しますが、個人的に印象深いのは、「最近の東京は、人気のある店、便利な店が集まった商業施設がボコボコできて、どの街に降りても同じ風景に見えたりする」というセリフ。東京では、随所で再開発が進み、その街ならではの良さが消えていく。もちろん便利にはなるものの、どこか味気ないーー、そんな思いにはっとさせられます。

それでは、今までの取材で印象に残った街は、どこなのでしょうか。

「錦糸町ですね。私自身まったくなじみがなくて、なんだか怪しい街という印象もあったので女性にオススメするのはどうなんだろうと思っていました。ですが、行ってみたら北口と南口で全然違う表情があって、2年くらい期間限定で住むのなら面白いと思いました」と話してくれました。

シェアハウスにリノベ、事故物件まで、ネタはどう仕入れるの?

作品中では、シェアハウスが登場したり、主人公の双子が実家のリノベーションを検討したりと、今ドキの不動産事情もチラリとのぞかせています。

「不動産のネタについては、ヤンマガの担当編集者と相談したり、シェアハウスは物件ありきで話を考えました。お墓の隣は安いというのも、取材で知りましたね。私自身、毎日、間取図を見るというほど熱烈ではありませんが、不動産サイトを見るのは好きですね」だそう。

ちなみに、2巻で双子がリノベーションを検討し、リノベーションされた家を見学するエピソードがありましたが、実は取材時にマンガの展開そのままに、DIY向けの素材やパーツを販売する会社の人と出会ったそう。こうした偶然の出会いが、ストーリーをより盛り上げていくのかもしれません。

最後に、気になる今後の展開、街選びについてアドバイスを伺いました。
「双子の住まいのリノベーション計画が進んでいきます。家が成長、進化していく感じですね。住みたい街ですが、SUUMOではいいにくいですが(笑)、よくメディアで見るような『住んでみたい街ランキング』に流されず、自分の好きな街、自分にあった街を見つけてほしいですね」と話します。

東京にはさまざまな街があり、また数多の住まいがあります。確かに恵比寿や吉祥寺もよいですが、まだ見ぬ魅力的な街、魅力的な暮らしは、意外と近くの、見落としがちな小さな街にあるのかもしれません。

【画像4】街を歩きながら、おしゃれな人が多いな、おしゃれをするということは人の目を意識する人、だとしたらへんなことはしないよな……などと想像・観察しているそう(写真撮影:片山貴博)

【画像4】街を歩きながら、おしゃれな人が多いな、おしゃれをするということは人の目を意識する人、だとしたらへんなことはしないよな……などと想像・観察しているそう(写真撮影:片山貴博)

●取材協力
マキヒロチさん
第46回小学館新人コミック大賞入選。ビッグコミックスピリッツにてデビュー。
代表作に「いつかティファニーで朝食を」「吉祥寺だけが住みたい街ですか」がある。
・マキヒロチウェブ
・吉祥寺だけが住みたい街ですか?元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109516_main.jpg

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スッキリ暮らす[4] 小さな家でも「持ちたい物は持つ」、さいとうきいさん

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スッキリ暮らす[4] 小さな家でも「持ちたい物は持つ」、さいとうきいさん

都心のスモールスペース暮らしを応援する活動をしている“ライフオーガナイザー”のさいとうきいさん。ライフオーガナイザーとは、空間整理・思考整理のコンサルタントのこと。「好きな物、必要な物など家にある物は多いけれど、工夫して小さな家に暮らしています」と話すさいとうさんに、すっきり暮らすための収納・インテリア術について伺いました。●【連載】モノを減らしてスッキリ暮らす
「2016年こそはすっきりした家で暮らしたい!」「4月の新生活に向けて片づけよう!」——年末や年頭に、そう心に期した人は多いのではないでしょうか? 家がすっきりしない最大の原因は『物が部屋の広さに対して必要以上に多いこと』。自分の物の適正量を知って、余分な物を手放せばよいのですが、「もったいないから捨てられない」となかなか実践が進まないのも実情です。そこでこの連載では、スッキリライフを送っている方々に、物の所有欲から解放された心の変遷や処分の実践方法についてうかがいます。物を減らして「今年こそ!」を実現させましょう。「小さな家でも”持ちたい物は持つ”暮らしをしています」

ご自身やご家族の仕事の都合でニューヨーク、サンフランシスコ、ホーチミン、横浜、東京などで暮らし、そのほとんどが60m2未満のコンパクトな家だったという、さいとうさん。
「職場へのアクセスや生活利便性を考えて、どの街でも都心の便利な立地を選ぶことが多く、そうすると選択肢は小さな家になるのですが、そうした限られた広さの家でも『持ちたい物は持つ』という暮らしをしています。物があることで家族みんなが楽しい気分になり、暮らしが快適になるのなら、物が多少増えてもかまわないと考えているからです」

現在のお住まいは59m2・1LDK+DEN(「DEN」とはほら穴を意味する言葉で書斎や趣味のための部屋などに使う。さいとうさんのお宅では子ども部屋として使用)のマンション。ご夫婦・お子さんの3人家族と愛犬1匹が暮らす家としては、決して広いわけではありませんが、部屋の広さに合わせて選んだサイズの家具が収まり良く置かれ、すっきりとした居心地の良さを感じさせてくれます。

見えるところはすっきりしていますが、収納内は意外と物が多い、さいとう邸。
例えば、キッチンには包丁8本、まな板5枚、フライパン4つのほか、グリルパン、オーブンプレートまでそろっています。これは料理好きで道具にこだわりがある夫の愛用品。
さいとうさんがキッチンでよく使うのはハンドブレンダー、スライサーやジューサーなどで手早い調理に活躍しています。自動床拭きロボットやズボンプレッサーという便利な物もそろえています。「料理や掃除などの家事は苦手意識があるので、サポートしてくれる道具は積極的に取り入れています」

「狭い家の場合、広さに合わせて少ない物で暮らす必要に迫られることは多々ありますよね。あれこれ工夫してそれを楽しめるのなら良いのですが、我慢することが多いのはよくないのではないかと思います。必要なら物は多く持ってもいいと割り切り、限られた空間を有効に使って、隅々まで手の行き届いた生活をすることが大切なのではないでしょうか」とさいとうさんは話します。

【画像1】木の家具で統一感のあるダイニング。ダイニングテーブルは部屋の広さに合わせてサイズをオーダーしました。右側の大きな鏡は部屋に視覚的な広がりを生んでくれます(写真:片山貴博)

【画像1】木の家具で統一感のあるダイニング。ダイニングテーブルは部屋の広さに合わせてサイズをオーダーしました。右側の大きな鏡は部屋に視覚的な広がりを生んでくれます(写真:片山貴博)

【画像2】キッチンのカウンタートップに置く物は必要最小限の物だけなので、すっきりしています。収納力のあるシステムキッチンだから、収納内はたくさんの道具類と食器が収まっています(写真:片山貴博)

【画像2】キッチンのカウンタートップに置く物は必要最小限の物だけなので、すっきりしています。収納力のあるシステムキッチンだから、収納内はたくさんの道具類と食器が収まっています(写真:片山貴博)

【画像3】ダブルベッド、2人用デスク、書棚、ドレッサー兼チェストが置かれた寝室。家具は多いのに、色数を抑えているのですっきり見えます(写真:片山貴博)

【画像3】ダブルベッド、2人用デスク、書棚、ドレッサー兼チェストが置かれた寝室。家具は多いのに、色数を抑えているのですっきり見えます(写真:片山貴博)

「”1軍”をゆったり8割収納、”2軍”はぎゅっと10割収納」

では、物が多くても部屋をすっきりさせるためには、どうすればいいのでしょうか。

片づけで考えるべき大切な点は「ストレスフリー」ということ。
さいとうさんが所属する日本ライフオーガナイザー協会では、片づけを「3つのS」=「1.ストレスフリー→2.すっきり→3.素敵」に分けて考えるそうです。
必要な物がどこにあるか分からない、何が入っているか分からない収納がある、よく使う物の出し入れがしづらい、といった状態なら、最初にそのストレスを取り除かなければ、いくら「すっきり」片づいた「素敵」なインテリアの家にしても、暮らしが快適にはなりません。物の適正量を見直して、使いやすい動線上に収納することが必要です。

そのため、まずは自分の物の適正量を知ることから始めましょう。
さいとうさんに教えてもらった適正量の見極め方は「何がどこにいくつあるかを把握しているか」で判断すること。把握できない物は適正量オーバー=物に圧倒されているということで、見直しのタイミングです。
「物の適正量は人それぞれで異なります。他人から多いと思われても、自分が物の存在を把握できていればいいわけです」

さらに、物の量が収納スペースの広さに対して過多でないか、出し入れにストレスを感じないかという点も確認します。どう工夫しても収納に収まらない、出し入れするたびにほかの物が邪魔して取り出しづらく、イライラするといった場合は、物の量を見直したいものです。

「物ストレスにイラッとしたらメモに書き出しておくと、自然と改善方法を考えるようになります。また、処分を迷った物は、しまい込まず1カ所にまとめて放置しておくと、判断しやすくなりますよ」

そうして適正量以上の物を整理したら、「よく使う物を1軍、頻繁に使わない物は2軍に分けます。1軍は出し入れしやすい場所に2割の余裕を持たせた『8割収納』でゆったりしまい、2軍は比較的使いづらい場所にぎゅっと『10割収納』でしまいます。こうすることで、日常の物の出し入れのしやすさと、ある程度の収納力を確保できます」

出し入れしやすい8割収納を使うようになると、ストレスフリーの快適さを実感できるので、片づけがどんどんはかどりそうです。

【画像4】玄関収納の一部を洗剤等のストック置き場として活用。ストックはここに入るだけと決めて1カ所にまとめているので、在庫管理がしやすいそう。買い忘れや買い過ぎを防いでくれます(写真:片山貴博)

【画像4】玄関収納の一部を洗剤等のストック置き場として活用。ストックはここに入るだけと決めて1カ所にまとめているので、在庫管理がしやすいそう。買い忘れや買い過ぎを防いでくれます(写真:片山貴博)

【画像5】約2畳のウォークインクローゼットは、衣類のほか季節家電などもしまいます。通路スペースに可動式のキャスター付きラックを置くことで、かなりの収納力を発揮(写真:片山貴博)

【画像5】約2畳のウォークインクローゼットは、衣類のほか季節家電などもしまいます。通路スペースに可動式のキャスター付きラックを置くことで、かなりの収納力を発揮(写真:片山貴博)

「美しく整った場所を1カ所保つと、全体のイメージが上がります」

狭い空間では人と物の距離が近いため、広い部屋よりも散らかりが目立ってしまいます。いつも部屋を美しく保つのは難しいというときは、部屋の1カ所にフォーカルポイント(視線が集まる見せ場)をつくって、そこは物をごちゃごちゃと置かず、美しく整えておくと、ほかの場所が少し散らかっていても、部屋全体のイメージがよく見えるそうです。
さいとう邸の見せ場はテレビコーナーで、木目が美しいテレビボードに目が引き付けられます。ソファ前にセンターテーブルを置いていないので、より広さを感じさせています。

ダイニングテーブルは面積が広いだけあって、物が置かれていると雑多な印象を生みます。「テーブルの上は聖域と考えて、物を置かないようにしましょう。そうするために私の家では、テーブルのすぐ横に、大きなオープンシェルフを置き、テーブルで使った物や書類をすぐにしまえるようにしています」

インテリアに統一感があると、部屋や家全体がまとまって見える点にも注目です。さいとう邸のインテリアは、木の家具をメインにし、色合いを茶色の濃淡、黒、白に抑えることで、すっきりした印象です。さらに、部屋に置いている加湿器や空気清浄機などの家電もスタイリッシュなデザインを選んで、目立たないようにしています。
「色数が多いと見た目にうるさいので、色は気を使います。また、清掃道具や家電等の生活感の出やすい物は死角に置くようにしています」

それから、理想の部屋のイメージを固めていないと統一感がなくすっきりしない部屋になってしまうことも。ナチュラルもいいけど、モダンな感じも好き、どちらも好きで悩む、というようにインテリアの方向性で迷う人は結構多いと思います。
そんな場合は、雑誌やWEBなどで好みのインテリア写真を集めて、家族で話し合いながら、理想を固めていくとよいそうです。お勧めはPinterest(ピンタレスト)というサービスサイト。インターネット上にある好きな画像を集めて保存しておけるサイトです。

また、インテリアや雑貨が好きという人は、つい好きな物を多めに、あちこちに飾ってしまいがちですが、「インテリアは引き算が重要」とさいとうさんは話します。飾り棚の上に物を10個飾るのと、3個飾るのでは、少ないほうが物の良さが映え、すっきり感じられるわけです。飾る物が増えたら、何か1つを減らすといった意識が大切です。

「わが家もいつもピシッと整っているわけではないですよ。だから、多少散らかっていても、それほど雑多に見えない工夫や、短時間で楽に片づく仕組みを考えています」とさいとうさんは微笑みます。
「『ラクしたがり』の私だからこそ、暮らしやすい動線にこだわって、片づけや掃除がしやすくなるよう工夫しています。物が多くてもどうしたら心地よく暮らせるか、使いやすいかを徹底的に考え、それを趣味として楽しんでいます(笑)」

【画像6】さいとう邸のフォーカルポイントであるテレビコーナー。美しい空間を保つよう、機器や配線を隠せるテレビボードを選択しました。扉はガラスに突き板を張ったもので、リモコン透過性があります(写真:片山貴博)

【画像6】さいとう邸のフォーカルポイントであるテレビコーナー。美しい空間を保つよう、機器や配線を隠せるテレビボードを選択しました。扉はガラスに突き板を張ったもので、リモコン透過性があります(写真:片山貴博)

【画像7】普段づかいの茶器や食器たち。美しいデザインだから飾りたくなります。毎日のように使っているので、見せる収納でもほこりのたまる暇がありません(写真:片山貴博) 

【画像7】普段づかいの茶器や食器たち。美しいデザインだから飾りたくなります。毎日のように使っているので、見せる収納でもほこりのたまる暇がありません(写真:片山貴博) 

【画像8】無印良品のオープンシェルフを置き、リビング・ダイニングで使う物や食器類、お子さんのおもちゃ、絵本等を収納しています(写真:片山貴博)

【画像8】無印良品のオープンシェルフを置き、リビング・ダイニングで使う物や食器類、お子さんのおもちゃ、絵本等を収納しています(写真:片山貴博)

【画像9】窓近くに設置した鏡は、室内をより明るくしてくれます(写真:片山貴博)

【画像9】窓近くに設置した鏡は、室内をより明るくしてくれます(写真:片山貴博)

「家族の行動を観察してよく使う物の定位置を決めました」

部屋をすっきり見せるには、よく使う場所に物の定位置を決めることが大切。定位置がないと、あちこちにちょい置きしてしまい、部屋は雑多な印象になります。

特に定位置を決め忘れてしまうのが「借り物」(図書館の本など)「頂き物」「長時間持ち出す物」(携帯電話、鍵など)の3つですが、これらにも定位置を設けることが必要です。
さいとう家では、最初、図書館の本は定位置がなかったため、部屋のあちこちに置かれて、所在不明になることもありました。借りた本の定位置としてソファの近くにかごを置いたところ、家族みんながそこに本を戻すようになったそうです。

家族で暮らしていると、自分は片づけていても、ほかの家族が物を出しっぱなしにしてしまい、いつまでたっても片づかないといった状況は多くの家庭で見受けられます。

「そんなときは、その家族の家での行動パターンをよく観察して、つい置いてしまう物を確認します。その物の定位置を、生活動線上や物がそこに置かれていると便利な場所に設けると、自然とそこに置くようになってくれると思います。例えば私の夫は仕事から帰宅すると、携帯電話や鍵などをバラバラにちょい置きしていましたが、玄関に収納場所を設けたら、そこに置くようになりました。携帯電話の充電も玄関で行っています」

自分が片づけ下手だと感じている人は、定位置をいつも意識することで、次第に元の位置に戻す習慣が付くのではないでしょうか。

【画像10】寝室のドレッサー兼チェストにグリーンや雑貨を飾って潤いある空間に。ブラシはここが定位置で化粧パウダー等をさっと掃除するのに便利。出していても様になる温もりあるデザインです(写真:片山貴博)

【画像10】寝室のドレッサー兼チェストにグリーンや雑貨を飾って潤いある空間に。ブラシはここが定位置で化粧パウダー等をさっと掃除するのに便利。出していても様になる温もりあるデザインです(写真:片山貴博)

【画像11】洗面台でよく使う洗剤類は「見せる収納」で。出し入れの際のワンアクションが減らせます。出しっ放しだから見た目にうるさくない白いボトルで統一(写真:片山貴博)

【画像11】洗面台でよく使う洗剤類は「見せる収納」で。出し入れの際のワンアクションが減らせます。出しっ放しだから見た目にうるさくない白いボトルで統一(写真:片山貴博)

「子どもが自然と片づけられる仕組みを考え抜きました」

そうした片づけ習慣が身に付く仕組みは、お子さんのおもちゃ遊びの際にもとても有効です。

親が子どもに「片づけなさい!」と言い続けていると、片づけを嫌いになってしまうのではないかと話す、さいとうさん。「だから、おもちゃで遊び終わったら、親子で『片づけ競争』をしたり、おもちゃをほうきで集める『掃除ごっこ』をしたりすることで、片づけ習慣が遊びの延長で身に付くようにしています」

おもちゃの収納では、バスケット毎に、のりもの、粘土などの種類・素材別に分類してしまうことで、お子さんはどこに何があるのか把握でき、出し入れもしやすくなっているそうです。

おもちゃやそれ以外でも、お子さんが自発的に片づけられるような環境づくりに気をつけてきました。

★さいとうきい流、子どもが自発的に片づけられるポイント5

(1)遊ぶ場所の近くにおもちゃを収納する
→おもちゃの出し入れが簡単で、散らかる範囲も最小限
(2)収納場所や棚の高さは成長に合わせて見直す
→手に取りやすいから、子どもでも楽に片づけられる
(3)ワンアクション収納&7~8割収納に
→小さい子どもでも簡単に出し入れできる
(4)しまう物は種類別・素材別など子どもが決めた分別に合わせる
→戻す場所を自分で把握しやすい
(5)5分以内で片づけられる量にする(それをおもちゃの適正量と考える)
→負担なく片づけられる

こうして、お子さんが「片づけは楽しくて簡単にできること」と認識していったおかげで、おもちゃだけでなく、自分のヘルメットやスリッパなども定位置に戻すようになったといいます。
「さらに私をまねて、洗濯物を一緒に畳んでくれたり、ティッシュペーパーがなくなるとストック棚から補充してくれるようにもなりました」と、3歳のお子さんが楽しくお手伝いをしている微笑ましい状況も生んでいます。

【画像12】ラタンバスケットに1軍おもちゃを「8割収納」し、黒いボックスには2軍おもちゃを「10割収納」しています(写真:片山貴博)

【画像12】ラタンバスケットに1軍おもちゃを「8割収納」し、黒いボックスには2軍おもちゃを「10割収納」しています(写真:片山貴博)

【画像13】3畳未満という小さな空間は3歳のお子さんの部屋。成長したら、リフォームで隣室との間仕切り壁をずらして部屋を広げる予定(写真:片山貴博)

【画像13】3畳未満という小さな空間は3歳のお子さんの部屋。成長したら、リフォームで隣室との間仕切り壁をずらして部屋を広げる予定(写真:片山貴博)

「最近は『物をどんどん捨てなくてはいけないのに捨てられない』『物が多いことに罪悪感がある』という人が多く見受けられます。片づけに優先度を上げられない人もいますし、物の処分や片づけが苦手という人も多い。でも、苦手ならほどほどでいいんです。毎日の暮らしがそれほど不便でなければ、つらいのに無理をして物を捨てなくてもいいのではないでしょうか。大切なのは、心地よく暮らすための工夫を『楽しむ』ことです」
そんなさいとうさんのおおらかな言葉を伺って、「何か一つ、物の置き場所を生活動線に合わせて変えてみる。収納をまずは1カ所、8割収納にしてみる。ーーそんなところから少しずつ始めていけば、工夫することがだんだん楽しくなり、物が多くても心地よい暮らしが手に入るのではないか」と感じました。

●取材協力
さいとうきいさん
都心のスモールスペース暮らしを応援するライフオーガナイザー。日本ライフオーガナイザー協会運営のWEBマガジン「片づけ収納ドットコム」編集長。著書に『狭くてもすっきり暮らせるコツ61』『ものが多くてもできるコンパクトな暮らし』がある元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109466_main.jpg

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世界最大のインテリアの祭典「ミラノ・サローネ2016」現地レポート

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世界最大のインテリアの祭典「ミラノ・サローネ2016」現地レポート

ミラノ・サローネとは、毎年4月にイタリアのミラノで開催される世界最大規模の国際家具見本市(Salone del Mobile.Milano)を中心に、街中でインテリアデザインにまつわる展示が行われる祭典の通称。
インテリアデザインの最新トレンドが発信される[MILAN DESIGN WEEK 2016]は4月12日~17日(現地時間)、筆者も取材にミラノへ飛んだ。

開催55周年。新しい試みにもチャレンジ、進化するサローネ

開幕した国際家具見本市(Salone del Mobile.Milano)のRho Fiera会場(冒頭の写真)に向かう。
ここへ来るたびにワクワクするのは、この流線型で躍動感のある会場建築のパワーな気がする。
(やっぱり、東京オリンピックも会場デザインは大事!)

【画像1】イタリア人建築家マッシミリアーノ&ドリアナ・フクサスが2005年にデザインした会場、巨大なガラスのキャノピーに覆われている。こちらは南口ゲートで開場を待つ列(写真撮影/藤井繁子)

【画像1】イタリア人建築家マッシミリアーノ&ドリアナ・フクサスが2005年にデザインした会場、巨大なガラスのキャノピーに覆われている。こちらは南口ゲートで開場を待つ列(写真撮影/藤井繁子)

【画像2】今年は55周年を記念したロゴも発表。ロレンツォ・マリーニによるデザイン(写真提供/藤井繁子)

【画像2】今年は55周年を記念したロゴも発表。ロレンツォ・マリーニによるデザイン(写真提供/藤井繁子)

20万m2の展示スペースに、2310社が展示(約30%がイタリア以外の国)。今年は2年に1回のキッチン・バス国際見本市(EuroCucina、キッチン120社+キッチン設備機器40社+バス洗面200社)の開催年、デザイナーの登竜門でもあるSaloneSatelliteには650人の選ばれし若手デザイナーが展示参加した。

【画像3】見本市会場配置図、赤・青が家具、黄がキッチン&設備、緑がバス洗面、グレーが若手デザイナーのパビリオン。3番パビリオンが、新設された高級ブランドカテゴリー「xLux」(写真撮影/藤井繁子)

【画像3】見本市会場配置図、赤・青が家具、黄がキッチン&設備、緑がバス洗面、グレーが若手デザイナーのパビリオン。3番パビリオンが、新設された高級ブランドカテゴリー「xLux」(写真撮影/藤井繁子)

今年、家具の展示会場構成が変わった。「Classic」 と 「Design」の2カテゴリーに展示を分類。加えて新たに、「xLux(エクストラ・ラグジャリー)」というセクションができた。

ハイエンドがターゲットとなる高級ブランドのインテリアを新しい「xLux」セクションに集めた。有名ファッションブランドFendi、Ferre、UngaroやVersace、高級車Aston MartinやLamborghiniなどのインテリアが展示されている。

スタルクやnendo…有名デザイナーたちが新作と共にやってくる!

会期中、イタリアだけでなく世界の有名デザイナーたちが、家具ブランド各社のブースにやってくる。行き交う広い会場で、発表会だけでなく偶然にデザイナーたちと会えるのも楽しみの一つ。

早速、今や日本を代表する人気デザイナー「nendo」の佐藤オオキ氏にKartell社で遭遇。

【画像4】Kartell社ブースにて。今年は「50 MANGA CHAIRS.」と題した個展も街中で開催(写真撮影/藤井繁子)

【画像4】Kartell社ブースにて。今年は「50 MANGA CHAIRS.」と題した個展も街中で開催(写真撮影/藤井繁子)

【画像5】新作は子ども用のコーナーに。H型鋼と呼ばれる鉄骨材の形状から発想したロッキング・ホース「H-horse」に自身が乗っておどけてくれた!(写真撮影/藤井繁子)

【画像5】新作は子ども用のコーナーに。H型鋼と呼ばれる鉄骨材の形状から発想したロッキング・ホース「H-horse」に自身が乗っておどけてくれた!(写真撮影/藤井繁子)

【画像6】リッソーニ、ウルキオラなど有名デザイナーと共にKartellの顔となる吉岡徳仁氏(写真撮影/藤井繁子)

【画像6】リッソーニ、ウルキオラなど有名デザイナーと共にKartellの顔となる吉岡徳仁氏(写真撮影/藤井繁子)

吉岡徳仁氏とは行き違ってまだ会えていないが、今年のブースはデザイナーの巨大な顔が並ぶ…

【画像7】人で隠れると、誰だかよく分からなくなってしまうが(笑)、日本人らしい徳仁さんのお顔立ち(写真撮影/藤井繁子)

【画像7】人で隠れると、誰だかよく分からなくなってしまうが(笑)、日本人らしい徳仁さんのお顔立ち(写真撮影/藤井繁子)

【画像8】照明「PLANET」シリーズ、吉岡氏が追求している

【画像8】照明「PLANET」シリーズ、吉岡氏が追求している”宇宙観”が感じられる。樹脂製と思えないクリスタルな輝きだ(写真撮影/藤井繁子)

driade社では、大御所フィリップ・スタルク氏が登場。新作ソファ「Wow」を発表した。

【画像9】デザインに求められるものを問われ「Intelligent」と繰り返していた。右が「Wow」ソファの一部、シェーズロング。意外にコンサバ・デザインで素敵(写真撮影/藤井繁子)

【画像9】デザインに求められるものを問われ「Intelligent」と繰り返していた。右が「Wow」ソファの一部、シェーズロング。意外にコンサバ・デザインで素敵(写真撮影/藤井繁子)

スウェーデン人気女性デザイナーユニットのフロント、porro社で遭遇。
各社で引っぱりだこで多忙な彼女たちだが「他にもトーネット社のロッキング・ホースとか、アクサーの水栓とかも見てね」と、気軽に対応してくれる優しい人柄が作品に表れている。

【画像10】フロントのソフィア・ラガークイスト(左)アンナ・リングレン(右)、porro社新作のチェアーに座ってくれた…椅子見えない!?(写真撮影/藤井繁子)

【画像10】フロントのソフィア・ラガークイスト(左)アンナ・リングレン(右)、porro社新作のチェアーに座ってくれた…椅子見えない!?(写真撮影/藤井繁子)

こちらは英国デザイナーのロン・アラッド、Moroso社との25年のパートナーシップを記念した個展を街中2カ所で開催。

【画像11】斬新な発想とデザインのヒストリーが、スケッチや写真でも紹介された

【画像11】斬新な発想とデザインのヒストリーが、スケッチや写真でも紹介された”The Arad”な空間展示(写真撮影/藤井繁子)

今年は初日から来場者数が多く、人気ブースは入場制限で行列も見られた。昨年のミラノ万博開催で「今年はイタリア人、疲れてるかもなぁ…」という私の予測は大きく外れ、「EXPOの成功によって、ミラノは経済復興に向け勢いがついた」と運営関係者。

ミラノ市内街中でも1000件を超えるイベントが行われ、加えて20年ぶりに開催されることになった「第21回Triennale International Exhibition(ミラノ・トリエンナーレ国際博覧会)」会場も見逃せない…眠れない1週間が始まった。

以上、今回は前編として初日のミラノ・サローネ見本市会場の速報を。後編のミラノ・レポートは、キッチンや街中にあふれるデザイン・イベントの様子を報告する予定。乞うご期待!

●以前のイベントの様子(SUUMOジャーナル)
・【ミラノ・サローネ現地レポート(1)】Milan Design Week 2012 プレスレビュー@TORTONA
・【ミラノ・サローネ現地レポート(2)】LIXILもDIESELも!TORTONA地区が面白い
・【海外レポート】ミラノ・サローネ前夜、注目のデザイナーPiet Boonを訪ねて
・【海外レポート】アムステルダムでトップデザイナーの自宅に訪問元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109555_main1.jpg

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猫3匹も人もハッピー、240万円のリフォームでどんな空間に?

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猫3匹も人もハッピー、240万円のリフォームでどんな空間に?

昨年から話題の「ネコノミクス」。私の周りにも「ペットのために使うお金は惜しくない」と言う人が多いのは確か。
今回は猫のために素敵なリフォームをしたお宅があると聞き、犬猫と暮らす筆者は興味津々!“猫のための住まいの工夫”を教えて頂きました。
こだわりの自然素材で、猫も人も安心&快適

東京都台東区にある築18年のマンション、3匹の猫と暮らす50代女性Kさんのお宅。9年前にリフォーム後、2度目のリフォームということ。
今回は自然素材やリサイクル材を使って、猫にも人にも優しい安らげる空間にしたかったとのこと。

壁は天然のシラス土を使った塗り壁。シラス土は消臭・殺菌などの効果がありペットを飼っている家にはもってこいの自然素材。シラス壁は調湿効果もあるので、猫にも人にも快適な空気環境を保つことができる。

【画像1】キッチンからリビング方向を望む。ワンルーム空間のリビングとキッチンの間に土間を通した面白いプラン!(画像提供:ミサワホームイング)

【画像1】キッチンからリビング方向を望む。ワンルーム空間のリビングとキッチンの間に土間を通した面白いプラン!(画像提供:ミサワホームイング)

【画像2】ここに居た!やっぱり猫は階段が大好き。窓辺につながる特等席は、収納に合わせてプランされた猫用の階段(画像提供:ミサワホームイング)

【画像2】ここに居た!やっぱり猫は階段が大好き。窓辺につながる特等席は、収納に合わせてプランされた猫用の階段(画像提供:ミサワホームイング)

以前の壁は手漉き和紙のクロス貼りだったので、猫ちゃんたちが爪を研いでボロボロに… 塗り壁になってからは、お利口にボードで爪研ぎしているそう。

もう一つ印象的な自然素材が、カウンターや収納扉などに使われた杉の足場材。
足場材とは工事現場などで使われた足場の板をリサイクルして使うもので、Kさんこだわりの素材である。使い込んだ古材感によって、シャビーシックなインテリア・デザインに仕上がっている。

【画像3】残った足場材をインテリアに使ったり(左)雰囲気のある扉ラッチ(右)もKさん自身がDIY。爪も研ぎ放題?(画像提供:ミサワホームイング)

【画像3】残った足場材をインテリアに使ったり(左)雰囲気のある扉ラッチ(右)もKさん自身がDIY。爪も研ぎ放題?(画像提供:ミサワホームイング)

収納力アップでスッキリ空間!猫も自由奔放に行ったり来たり

今回のリフォームでキッチンはカウンター式にレイアウト変更。
土間を玄関からキッチン内まで通し、ダイニング側は小上がりで高低差を付けてある。この下は床下収納になっていて、あふれていた書類などが片付いたとのこと。

【画像4】お料理をふるまわれる機会が多いKさん。床の高低差でお客様との目線が丁度良いレベル、お店のよう!(画像提供:ミサワホームイング)

【画像4】お料理をふるまわれる機会が多いKさん。床の高低差でお客様との目線が丁度良いレベル、お店のよう!(画像提供:ミサワホームイング)

そして、キッチンのカウンターは開閉式!調理時には立てて使い、使わないときは閉めて大きなダイニングテーブルに。猫がコンロや水まわりに入らないための工夫でもある。

【画像5】奥にはパントリーも設けられ、キッチンまわりもスッキリ収納(画像提供:ミサワホームイング)

【画像5】奥にはパントリーも設けられ、キッチンまわりもスッキリ収納(画像提供:ミサワホームイング)

気になるトイレ事情… 猫3匹だと3つ?

筆者宅には犬と猫が一匹ずついるが、犬は散歩時に排泄するので家には猫用トイレが1つだけ。それでも結構スペースを取るし、臭いもするし、砂(チップ)は落ちるし……猫トイレは置き場所に困るもの。3匹の猫ちゃん宅は、どうしているんだろう?

猫トイレ、3つそろって洗面室にありました。こちらは9年前にリフォームした洗面・浴室ゾーン。洗面ボウルの下をオープンにして活用している。

【画像6】「猫トイレはこれまでいろいろ使ってきましたが、今は無印良品のキャリーボックスが使い勝手良くて」とKさん(写真撮影:Kさん)

【画像6】「猫トイレはこれまでいろいろ使ってきましたが、今は無印良品のキャリーボックスが使い勝手良くて」とKさん(写真撮影:Kさん)

【画像7】見事にサイズがピッタリ収まっている!猫は隠れてしたいから、この籠った感じが安心感ありそう(写真撮影:Kさん)

【画像7】見事にサイズがピッタリ収まっている!猫は隠れてしたいから、この籠った感じが安心感ありそう(写真撮影:Kさん)

囲い付きのデカい猫トイレって、場所は取るし、空間の雰囲気壊すしイマイチと思っていたので、これはナイス・アイデア!!

【画像8】バスルームから長女と次女が「ママ、何してるの?」(写真撮影:Kさん)

【画像8】バスルームから長女と次女が「ママ、何してるの?」(写真撮影:Kさん)

このリフォーム・デザインを担当したのは、ミサワホームイングの佐藤久美子さん。
「前回のリフォームから8年が経ち、人と猫のライフスタイルの変化にあわせて間取りを見直しました。高齢になった猫がロフトへ上がり辛くなったこともあり、ロフトを無くして空間を大きく使いました。また、足場材や土間のモルタル仕上げなどは、反りや割れ、色ムラなどリスクもあるので、お客様と職人を交えて施工方法を相談して進めました」

【画像9】面積:31m2  Before:1LDK+ロフト→After:1LDK  リフォーム工事費:約240万円(資料提供:ミサワホームイング)

【画像9】面積:31m2  Before:1LDK+ロフト→After:1LDK  リフォーム工事費:約240万円(資料提供:ミサワホームイング)

2度目のリフォームということもあって、長年温めてきたイメージ通りとなり大満足のKさん。今回のリフォーム例は、猫と心豊かに過ごすコンパクトでシンプルな都市のマンション。これからの住まいのお手本的な実例だ。
猫にとって優しい自然素材は人にも地球にも優しい建材。高齢な猫が過ごしやすい空間は人も過ごしやすい。”猫の幸せ=飼い主の幸せ”方程式は成り立っている(逆は必ずしも真ならず?)。

そんなペットに優しい住宅建材のラインナップが増えていると聞き、
次回は、ペット用リフォーム向けの商品をショールームへ見に行ってレポートする!

●取材協力
・ミサワホームイング株式会社元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109604_main.jpg

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マンション建替え[4] どうすればいい? 行政・ご近所・賃借人への対応

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前回触れたように「住民間の合意形成」は目的が一つになった段階でまとまりやすくなる。それよりも法律や条例の問題にかかわる行政とのやり取り、ご近所の意見、そして所有者ではなく賃貸で借りて住む人たちの対応のほうが実はずっと難しい。毎週のように起こる事件に四苦八苦するのはこれからだ。【連載】私の「マンション建替え」経験談
「マンションの老朽化」が話題になる昨今、マンションの建替えという問題が切実になってきている。どんな問題が起こり、どんな方法で解決していくか。具体的な例を知る機会は少ない。今回はマンション管理士の資格を取り、築50年の自宅マンションの建替えを経験した筆者が5回にわたってプロセスをお伝えします。
・第1回:マンション建替え[1] 仮住まいのはずが…建替え推進メンバーに
・第2回:マンション建替え[2] 「こんな住まいにしたい」の調整が大変
・第3回:マンション建替え[3] 建替え決議へ…「住民の意思統一」の道突然の計画変更で建物が2m低くなることに

前々回で総合設計制度で建設したと説明したが、これも一筋縄では進まなかった。最初に計画していた建物の高さが、急きょ2メートル低くなることになった。6階建てで2メートル低くなるため、設計変更が余儀なくされた。各階の階高が十分取れない可能性があるからだ。

行政からの許可は、度々変わる可能性がある。エリアによって高さ制限などの条例が変わることもある。また行政の担当者が異動になり、それまでいろいろと話し合っていたのに、イチから説明しなおさなければならないことも。昨今、建設してしまった後で「既存不適格建築物(※1)」になっている建物が話題になるが、「途中で変わってしまったんだな。たいへんだな」と正直同情してしまうことがある。

建物の高さを抑えることになったので、梁(はり)がなるべく出ない工夫をした。その後もさまざまな制約により、何度も何度も設計変更された。エントランスの位置や住戸の配置も事件が起きるたびに変更していく。「今週はどんな事件が起こりましたか?」というのが推進委員会の合言葉のようになっていた。

※1「既存不適格建築物」とは、建物を建てた時点では法令の規定を満たしているが、改正により規定に合わなくなった建物。建てた当初から法令に合っていない建物や、建てた当初は法令に合っていても、その後の増改築工事などを行うことによって法令に合わなくなった建物が「違法建築物」

「埋蔵文化財」の発掘調査で工期の着手が遅れる?

私たちの住んでいた場所は、縄文時代の上に弥生時代も重なる埋蔵文化財が眠る、埋蔵文化財包蔵地(※2)だった。その場合は文化財保護法に基づいて建築工事の前に「発掘調査」をしなければならない。その調査費用は一般的に、個人の家を建てる場合には行政が負担してくれるが、マンションの建替えは事業者が入るので工事者負担になるそうだ。つまり工事費用にプラスされるので私たちの負担になる。敷地が広かったせいか数千万円という金額に驚いた。

また調査期間中は建築工事に着手できないので工期が遅れる可能性がある。もともと建物が建っていても法律ができる前に立っていた場合は、以前に確認されていないことがあるから要注意だ。
しかもこの法律は、通常の行政の窓口である建築・土木の担当課ではなく、教育委員会の管轄となるため、どの程度の範囲をどれくらいの調査をするべきか分かりにくく、あらためて話し合う必要がある。試掘で発掘の必要が認められると、その間は建築工事はできない。

※2 参考:文化庁ホームページ「埋蔵文化財」

「耐震偽装事件」、「東日本大震災」と想定しないことも起きる

建替え決議の前年に耐震偽装事件が起こったために、2007年(平成19年)には建築基準法が改正された。そのため建築確認等のチェックがより厳しくなり、時間も掛かるようになっていた。また工事が始まってから東日本大震災が起こった。工事中の建物に影響はなかったものの、材料の入手が遅れたり、人手が集まらなかった。
建築中は、工期がいくらか遅れることはよくあるが、マンションの建替えはより時間が掛かると考えたほうがいい。このように想定しないことも起こるので、当初の計画より時間が掛かることを予定して、仮住まいの計画も立てる必要があると痛感した。私たちの場合も工事着手までに、当初の契約より1年ほど遅れた。

実は一番はじめに気を付けるべき借家人への対応

個人的に思うのは、建替えの話が出た段階で最初にしなければならないのは、実は借家人(賃貸人)への対応だと思う。所有者(家主)は建替えが決まれば全員退去するが、借家人はスムーズに退去してくれるとは限らない。そのためにも、時間をかけて借家人に理解してもらう必要がある。また契約を「普通借家契約」から「定期借家契約」(※3)に順次変えていくのがベストだろう。

借地借家法は、貸す人の勝手な理由で住居を失う人を守るために制定されているので、人口が減少し、借り手市場になった現在でも借家人の保護を重視している。現行法では、建替え決議がされていても、明渡しの正当事由として認めてもらえないことも多い。

長い間、同じ屋根の下で暮らし、区分所有者である住民と仲よく暮らしてきた借家人の方たちは、敷金の返還や引越し費用、新住居を借りる費用を用意すれば、比較的スムーズに退去してもらえる場合が多かった。問題になったのは、建替えが話題になってから入居したような方だ。家主が莫大な立ち退き料を請求され、裁判になるケースもあった。

そんなこともあるため、築古のマンションを新たに貸す場合は建替えの可能性を視野に入れた契約をするようにしたほうがいい。早めに勉強会を開催して理解をうながしても、住戸を貸している一人ひとりが努力する必要がある。全員が退去しなければ、それだけ工期の着手が遅くなる。借家人対応は時間と手間がかかるので早めに対策を考えておくことは大切だ。ここでも管理員のFさんは能力を発揮してくれた。借家人の方が家にいる時間やどんな生活の方かを把握してくれていたことが解決につながった。

※3 2000年(平成12年)3月1日から借地借家法に定期借家契約が加わった。普通借家契約では正当な事由が無い限り家主側から契約更新の拒否は出来ないが、定期借家契約ではあらかじめ期限を決めておくことにより、契約満了時の退去を前提にすることができる。しかし、2000年(平成12年)2月29日以前の普通借家契約は定期借家契約に変更することはできない。

忘れてはならない近隣の方たちへの配慮

建替えに関しては、地域の景観地区特別区民会議や町内会、街づくり委員会など、機会のあるごとに理事の方々が説明をしてくれていた。近隣説明会も数回にわたって実施した。

「豊かな緑を残してほしい」という要望があったが、街路樹診断士にお願いしてすべての樹木を調査したところ、状態が悪く、倒れる危険性が高いものが目立ち、移植に適したものは数本ということが分かった。同じ樹木を移植することは難しいが、以前の樹木とほぼ同じ本数の植樹計画があることで理解してもらった。

また今までより2階分高くなることで「見下ろされるのはプライバシーが気になる」という方には、植樹やバルコニーの素材を変えることで理解してもらった。

なかには「埋蔵文化財のために敷地を公園にしてほしい」とか「高層ビルのビル風のような風害が出る」とか、建替えそのものに反対をされる方もいたり、遠く離れた場所からわざわざ反対に訪れる方もいた。ただ幸いなことに、隣地が同時期に建替える集合住宅や大きな公共の施設だったおかげで、工事を差し止めるような大きな反対に合うことはなかった。

付近には小学校や幼稚園などの教育施設があった。工事期間のご迷惑の挨拶と説明には、子どもが通学していた理事が伺ってくれた。工事用車両の往来が激しくなるため、事業者は登校時間帯の通学路通行禁止を徹底し,周辺道路にも多数の交通誘導員を配置した。

なんといっても心強かったのは近隣の町内会長の方々が賛成してくれたことだろう。日ごろから理事の方々が町内会に属し、清掃当番などの集まりに積極的に参加してくれていたことが大きい。

行政、借家人、近隣の方たち、いずれの対応についても、やはりコミュニケーションの大切さは実感した。行政の担当者も、事業者だけではなく住民が直接窓口に行き、相談することで耳を傾けてくれる可能性が高い。借家人や近隣の方々も、日ごろからお付き合いのある方々は、私たちを応援してくれることが多かった。やはり長年住み続けてきた理事を中心とした住民の粘り強い交渉力がモノをいう。知識や資格だけでは解決しない問題があることを痛感した。次回は、総まとめとして建替え全般について振り返るとともに、建替えの如何に関わらず、老朽化したマンションの方策について考えてみたい。

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美しく仕上がる「アイロンがけ」6つのコツ

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4月は出会いの季節。初対面の印象をよくするためにも、しっかりアイロンがけした清潔感ある洋服を身に着けたいところ。しかし、アイロンがけは慣れていないと、余計にシワが目立ってしまうこともあります。そこで、初心者でも美しく仕上げるポイントについて、高い技術に定評があるヤマサワプレス社長・山澤亮治さんに教えてもらいました。
押さえておきたい6つのコツとは?

今回、教えていただいたのは、とくにアイロンがけをする機会が多いYシャツ。なんでも、Yシャツは他の衣類に比べて形状が複雑なため、アイロンがけの工程が多く難易度も高いのだとか。

では、さっそくコツを確認していきましょう。

●コツその1:アイロン台の縁に衣類を引っ掛ける

「アイロンをかけているときに衣類がぐしゃぐしゃと動いてしまわないよう、まずはYシャツをアイロン台に引っ掛けて固定します。そうすることでシワの伸びもよくなります」(山澤さん、以下同)

【画像1】Yシャツの場合は、襟元をアイロン台の縁に被せるようにしてしっかりと固定させる(写真撮影:藤原葉子)

【画像1】Yシャツの場合は、襟元をアイロン台の縁に被せるようにしてしっかりと固定させる(写真撮影:藤原葉子)

●コツその2:人目につくところは後回しにする

「アイロンは目立たないところからかけるというのが鉄則です。最初にかけた部分は、動かしているうちにヨレてシワになりがちなので、人目につくところは後回しにします。Yシャツでいえば『後ろ身ごろ(背面)』を最初に、『前身ごろ(前面)』と『襟』は最後にかけるとシワが目立たなくなります」

【画像2】慣れないうちは、パーフェクトに仕上げるのはなかなか難しい。そのため、目立つ部分を最後にかけるだけでも美しい仕上がりになる(写真撮影/藤原葉子)

【画像2】慣れないうちは、パーフェクトに仕上げるのはなかなか難しい。そのため、目立つ部分を最後にかけるだけでも美しい仕上がりになる(写真撮影:藤原葉子)

●コツその3:半身ずつかける

「市販のアイロン台はあまり大きくないので、例えば『後ろ身ごろ(背面)』全体を一気にかけようとせずに、半身でワンセットと考えてかけると早くて綺麗に仕上がります。ちなみに、ボタンはアイロン台のクッションにしずむので裏側からかけるようにします」

【画像3】「前身ごろ」と「後ろ身ごろ」を左右に分けて順番にかけていく(写真撮影:藤原葉子)

【画像3】「前身ごろ」と「後ろ身ごろ」を左右に分けて順番にかけていく(写真撮影:藤原葉子)

●コツその4:縫い合わせにシワを残さない

「とくに袖など縫い合わせの部分をしっかりかけることで、ほかの部分に多少シワがあっても縫い合わせに布地がひっぱられてカタチがよく見えます」

【画像4】縫い目を意識して丁寧にプレスする(写真撮影:藤原葉子)

【画像4】縫い目を意識して丁寧にプレスする(写真撮影:藤原葉子)

●コツその5:「線」を残したくない部分はアイロン台から落とす

「例えば袖などの円筒形の部分は、アイロンをかけていると跡に線が残ってしまいがちです。そのため、脇の下からカフス部分までの縫い目はしっかりプレスして問題ないですが、腕の外側の目立つ部分はアイロン台から落として、線を残さないようにします」

【画像5】布地の大部分はアイロン台に載せて、プレスによってついてしまう線を残したくない箇所はアイロン台から少しだけ落としておくのがコツ(写真撮影:藤原葉子)

【画像5】布地の大部分はアイロン台に載せて、プレスによってついてしまう線を残したくない箇所はアイロン台から少しだけ落としておくのがコツ(写真撮影:藤原葉子)

●コツその6:襟は2箇所に分けてかける

「襟は大きく分けると、襟羽根と見ごろをつなぐ『台襟』と首回りに広がる『襟羽根』の2つになります。この2つを一気にかけずに、まずは台襟をしっかりプレスしてから襟羽根をかけることで、襟元がピシッとした印象になりますし、襟羽根部分もフワッと綺麗に広がります」

【画像6】顔周りの印象を左右する襟元は、順番とパーツを意識することでより美しくなる(写真撮影:藤原葉子)

【画像6】顔周りの印象を左右する襟元は、順番とパーツを意識することでより美しくなる(写真撮影:藤原葉子)

シワひとつなく、襟元がパリっとメリハリのきいたYシャツは好感度もバツグン! いずれのコツも難しいものではないので、初心者でも取り入れることができそうです。

●取材協力
・ヤマサワプレス元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/pixta_19116297_M.jpg

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築50年の古ビルをリノベーションした、金沢発シェア型複合ホテル

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築50年の古ビルをリノベーションした、金沢発シェア型複合ホテル

北陸新幹線開通から1周年を迎える北陸の古都・金沢にシェア型複合ホテルが3月18日にグランド・オープンした。金沢観光の中核、ひがし茶屋街から徒歩3分という場所に位置するTHE SHARE HOTELS「HATCHi 金沢(ハッチ カナザワ)」だ。ホテルの企画・運営を手がけるのは、2005年の設立以来、首都圏のマンション・一戸建て住宅などの既存建物をリノベーションし再生する事業に取り組んできたリビタ(東京都渋谷区)だ。リビタにとっては北陸・金沢という本拠地を離れた土地で、また宿泊施設についてその企画から運営まで取り組むのは、いずれも初めてのことだ。コンセプトは「北陸ツーリズムの発地」だという。

常務取締役の内山博文さんは「地方に出かける機会が多いが、魅力的なホテルが少ない。地方創生が掲げられ、海外からの旅行者の増加に伴い地方都市にも流入する傾向があるものの、その受け皿は貧弱です」と現状を評価する。また「近年の旅行者は、地域に根ざした体験やコンテンツ、人との関わりを求めています」と説明する。こうしたニーズにこたえるために既存建物のリノベーションによる宿泊施設という取り組みに加えて“ディープな北陸へと誘うためのしかけ”を、「HATCHi 金沢」に盛り込んだという。

「HATCHi 金沢」の中身について紹介する前に、東京のリビタが金沢でホテル事業に取り組むきっかけについて少しふれる。

そもそも、金沢出身のリビタ社員、北島優さんが、リビタ社内で新規事業として、既存ストック活用による地域の食や文化芸術なども盛り込んだ複合的な宿泊施設の事業を提案したことにはじまる。北島さんの、地元・金沢への想いをベースにしながら、インバウンド需要を見込みむと共に、新しい体験型の宿泊という提案を含んだ事業立案だった。そして、北島さんは旧知の(有)E.N.N.代表で「金沢R不動産」を運営する小津誠一さんに、金沢の有休不動産について宿泊施設への用途転用・リノベーションを念頭に物件探しを依頼した。

幸いなことに、程なく候補となるビルが見つかった。金沢市街地からひがし茶屋街へアクセスする浅野川大橋の傍、築50年、地下1階・地上4階建てのビルだった。この建物は、もともとは仏具店として、地下は飲食店として利用されていた。リビタは設立10年を迎える機会でもあり、この建物を買い取り、宿泊施設として用途転用する決断をしたのだという。プロジェクトリーダーには北島さんが就くことが決まった。

【画像1】「HATCHi金沢」全景。地下1階、地上4階建て。ドミトリーと個室合わせて宿泊定員は94名(写真撮影:村島正彦)

【画像1】「HATCHi金沢」全景。地下1階、地上4階建て。ドミトリーと個室合わせて宿泊定員は94名(写真撮影:村島正彦)

【画像2】通りに面する1階には、コーヒーショップ、レストランなどが入り、宿泊客でなくても気軽に立ち寄ることができる(写真撮影:村島正彦)

【画像2】通りに面する1階には、コーヒーショップ、レストランなどが入り、宿泊客でなくても気軽に立ち寄ることができる(写真撮影:村島正彦)

1階は、地元の味に触れられる場に

北島さんは、北陸、金沢の人や文化に触れる手立てとして3つの取り組みを行った。

1つ目は、ローカルコミュニティと出会えるグランドフロアだ。建物の1階は、ひがし茶屋街と金沢市街地を結ぶ観光客が直接目にふれ、アクセス可能なフロアでもあることから、金沢で実績のある人気飲食店や物販店に入ってもらった。国内はもとより海外からの観光客がたたずみ、飲み食べ、買い物することで、交流を図ってもらうことを考えたからだ。

飲食店としてひとつめには休憩や旅のプランを考えてもらえるよう地元の人気のコーヒースタンド「HUM&Go# (ハム&ゴー)」が。
ふたつめには、これまで約10年間、金沢でくずし割烹料理を提供して人気を得ていたものの2014年に惜しまれ閉店した和食ダイニング「a.k.a.(アーカ)」が復活して運営に当たる。実は「a.k.a.」は、E.N.N.代表の小津氏が経営する(株)嗜季が運営するお店でもある。さらに、ホテルのレセプションカウンターを兼ねたキオスクでは、北陸3県の魅力を集めたギフトショップ「[g]ift(ギフト)」が出店し、デザイン面でも高感度な土産物を提供する。

【画像3】1階のエントランス入ってすぐに地元金沢で人気のコーヒースタンド「HUM&Go#」(画像提供:リビタ)

【画像3】1階のエントランス入ってすぐに地元金沢で人気のコーヒースタンド「HUM&Go#」(画像提供:リビタ)

【画像4】1階には、このほか、ギフトショップ「[g]ift」、和食ダイニング「a.k.a.」が入居する(画像提供:リビタ)

【画像4】1階には、このほか、ギフトショップ「[g]ift」、和食ダイニング「a.k.a.」が入居する(画像提供:リビタ)

館内の内装や調度には地元北陸の素材や伝統技術を

2つ目は、北陸各地の伝統技術を採用したことだ。築50年のビルを、シェア型複合ホテルに用途転用、リノベーションするに当たって、建物の随所に福井・富山・石川県など北陸の伝統技術に裏付けられた素材・パーツを使っている。

シェアキッチン&ラウンジのフローリングなどには富山県朝日町の「虫食いナラ材」を、ルームキーホルダーやレンジフードには、富山県高岡市の特殊な着色を行った銅器を用いるなど、こだわり抜いた。旅行者に、これらの建材・材料を館内で見る、触れてもらうだけでなく、これらをつくったメーカーや職人とも連携し、工房を巡るツアーを企画するなどし、北陸の魅力を発信していく予定だ。

【画像5】シェアキッチン&ラウンジのテーブル天板、フローリングには富山県朝日町、尾山製材の「虫食いナラ材」を使っている(写真撮影:村島正彦)

【画像5】シェアキッチン&ラウンジのテーブル天板、フローリングには富山県朝日町、尾山製材の「虫食いナラ材」を使っている(写真撮影:村島正彦)

【画像6】ルームキーのキーホルダーは、富山県高岡市のMomentum Factory Oriiによる特殊な着色を行った銅器を用いた(写真撮影:村島正彦)

【画像6】ルームキーのキーホルダーは、富山県高岡市のMomentum Factory Oriiによる特殊な着色を行った銅器を用いた(写真撮影:村島正彦)

【画像7】ランプシェードは、石川県能美市の九谷焼、上出長右衛門窯の六代目、上出恵悟さんの作品(写真撮影:村島正彦)

【画像7】ランプシェードは、石川県能美市の九谷焼、上出長右衛門窯の六代目、上出恵悟さんの作品(写真撮影:村島正彦)

展示・イベントを行えるシェアスペースを随所に

3つ目は、地元に根ざした活動を展開するアーティストやキーマンの活動の舞台となるシェアスペースを建物各所に設けたことだ。人通りも多い通りに面したエントランス脇には、地元の有志も交えてワークショップ形式でつくった屋台カートを設け、希望する有志が交代で金沢の食べ物など提供する。

1階エントランス脇にはアート作品を展示できるショーケースを設け、地元工芸作家の作品発表の場としている。この他にも、ホテルの共用部分には作品を展示できるスペースを幾つも設け、発表の場としている。これらのスペースを活用しながら、地元アーティストやキーパーソンなどとワークショップやトークショーなどイベントも随時開催する予定だ。

オープニングの企画としては、(株)ノエチカ・金沢クリエーティブツーリズムと連携し、金沢を拠点に新しい表現に挑む35歳以下の作家の作品をホテル共用部に展示し、ギャラリー・アートスペースが客室の空間演出を行う。つまり、ホテル全体が、ギャラリースペースと化している。作品の展示ばかりに留まらない。作品をつくりだすアーティスト、そのアトリエを訪問するツアーも随時企画し、旅行者と地元アーティストの交流を図る。

またHATCHiとアートの関わりは、地元美術館との連携も密接に図っていくという。ホテル開業直前の3月16日には、2004年のオープン以来すっかり金沢の顔になった金沢21世紀美術館の館長・秋元雄史さんと若手作家のトークイベントが行われた。

【画像8】3月18日〜5月29日、金沢を拠点に活動する35歳以下の作家の作品展「アートツーリズム」。1階、エントランス脇のショーケースに展示された青木千絵さんの作品(左)。3階エレベーターホールに展示された佐合道子さんの作品(右)(写真撮影:村島正彦)

【画像8】3月18日〜5月29日、金沢を拠点に活動する35歳以下の作家の作品展「アートツーリズム」。1階、エントランス脇のショーケースに展示された青木千絵さんの作品(左)。3階エレベーターホールに展示された佐合道子さんの作品(右)(写真撮影:村島正彦)

宿泊施設は、リーズナブルな価格設定のドミトリーと個室

HATCHi金沢の宿泊施設は、シェアードルームが5室、66ベッド、プライベートルームが3種、9室で、宿泊定員は94名だ。宿泊料(通常期)は、シェアードルーム:3800円~/ベッド、プライベートルーム8800円~/室とリーズナブルな設定だ。

【画像9】ドミトリールームは、男女共用の部屋と女性用の部屋を分けた(画像提供:リビタ)

【画像9】ドミトリールームは、男女共用の部屋と女性用の部屋を分けた(画像提供:リビタ)

【画像10】ドミトリーは、5室、66ベッド。スーツケースなど大きな荷物をしまうため、ベッド下に収納するスキマを設けた(画像提供:リビタ)

【画像10】ドミトリーは、5室、66ベッド。スーツケースなど大きな荷物をしまうため、ベッド下に収納するスキマを設けた(画像提供:リビタ)

【画像11】個室。定員は3名まで。シャワールームは個室専用共用のものを利用する(画像提供:リビタ)

【画像11】個室。定員は3名まで。シャワールームは個室専用共用のものを利用する(画像提供:リビタ)

【画像12】4階の個室。こちらは奥にバスルームを備えている(画像提供:リビタ)

【画像12】4階の個室。こちらは奥にバスルームを備えている(画像提供:リビタ)

【画像13】共用の洗面スペース(画像提供:リビタ)

【画像13】共用の洗面スペース(画像提供:リビタ)

【画像14】共用のバス(シャワー)スペース(画像提供:リビタ)

【画像14】共用のバス(シャワー)スペース(画像提供:リビタ)

【画像15】1階のホテルレセプション(画像提供:リビタ)

【画像15】1階のホテルレセプション(画像提供:リビタ)

【画像16】かつて地下にあった飲食店のサインを残した(画像提供:リビタ)

【画像16】かつて地下にあった飲食店のサインを残した(画像提供:リビタ)

オープンに先駆け3月15日には、プレス・関係者向けの内覧会と「OPENING PARTY」が開催された。地元北陸のマスコミ・関係者はもちろん首都圏からの参加もあり、パーティーは約210名という大勢でにぎわった。地元のパーティー参加者からは「東京発ではなく“金沢発のユニークな施設”が実現されたことが誇らしい」という声が聞かれた。

急増するインバウンドを睨んだ、宿泊施設の開業ラッシュが東京をはじめ地方都市でも相次ぐ。リビタが東京ではなく、地方都市でリノベーションによるホテル事業をはじめるのも、こうした流れに位置づけられるものだろう。

ただし、企画した北島さん、地元でサポートに回った小津さんはじめHATCHi金沢にはさまざまな地元の関係者のネットワークを最大限に活用しながら、地元金沢・北陸の工芸、アート、飲食、そして人といった多面的な魅力を積極的に取り入れることに心を配り、地域の人や文化と交流を図ることができる場として魅力的に演出されたものと見受けられた。

「HATCHi」という名称は、出発地を意味する「発地」に由来するそうだ。宿泊施設にとどまらず、建物内に仕掛けられたローカルとの接点をきっかけに、旅行で訪れた地域により深く、広く関わって欲しいという想いからだ。

リビタ代表取締役の都村智史さんは「HATCHi金沢を皮切りに、既存建物の用途変更を伴うリノベーションを施し、宿泊施設、飲食店、シェアスペース、店舗等で構成する「THE SHARE HOTELS(ザ シェア ホテルズ)」を展開し、新たなツーリズム、ライフスタイルを提案していきます」と話す。年内には金沢市内にもう1施設。京都、東京、北海道で計画が進められているという。それぞれの地域でどんなローカルとの接点のしかけを持ったシェア型複合ホテルを展開していくのだろうか。期待できそうだ。

【画像17】オープニングパーティーの様子。左からE.N.N.代表・小津さん、金沢21世紀美術館館長・秋元さん、リビタ代表取締役・都村さん、リビタ常務取締役・内山さん、HUM&Go#代表・久木さん(左)、リビタ、HATCHi金沢のプロジェクトリーダー・北島さん(右)(写真撮影:村島正彦)

【画像17】オープニングパーティーの様子。左からE.N.N.代表・小津さん、金沢21世紀美術館館長・秋元さん、リビタ代表取締役・都村さん、リビタ常務取締役・内山さん、HUM&Go#代表・久木さん(左)、リビタ、HATCHi金沢のプロジェクトリーダー・北島さん(右)(写真撮影:村島正彦)

【画像18】通りに面するエントランス脇では、有志によるワークショップでつくった屋台で地酒がふるまわれた(左)、地元金沢の関係者、また、首都圏などからのプレス関係者約210名がオープニングパーティーに訪れた(右)(写真撮影:村島正彦)

【画像18】通りに面するエントランス脇では、有志によるワークショップでつくった屋台で地酒がふるまわれた(左)、地元金沢の関係者、また、首都圏などからのプレス関係者約210名がオープニングパーティーに訪れた(右)(写真撮影:村島正彦)

●取材協力
・THE SHARE HOTELS HATCHi 金沢元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109688_main.jpg

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犬猫は肉球も違う!知っておきたい「ペット用リフォーム」のポイント

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猫は壁、犬は床 ペットリフォームのポイントは?

「猫3匹も人もハッピー、240万円のリフォームでどんな空間に?」では、猫と暮らすためのマンションリフォーム実例を紹介した。最近では、散歩など手のかかる犬よりも飼いやすい猫の方がブームらしいが、猫(16歳)犬(推定10歳)、2匹の飼い主である筆者としては「犬と猫、どちらとも選べない魅力があるのよね~!」と思う。
そして犬猫は、その習性によって適する住環境にも違いがある。最新のペット用建材をショールームでチェックしてみた。
猫もストレスを解消すれば、いたずらっ子にならない!

床材などペット用の住宅建材を早くから研究開発してきた、大建工業のショールームを訪ねた。
まずは、猫ブームにのって発売された新製品「ねこステップ」。猫は高い所が好きだもんなぁ〜。

【画像1】ステップ棚板(3万9500円/台)と円型の背面パネル付きセット(5万3000円/台)。背面パネルは、猫が壁に体を擦り付けることで汚れるのを防ぐもの(画像提供:大建工業)

【画像1】ステップ棚板(3万9500円/台)と円型の背面パネル付きセット(5万3000円/台)。背面パネルは、猫が壁に体を擦り付けることで汚れるのを防ぐもの(画像提供:大建工業)

「猫は空間を3次元で考えてあげないと、運動不足でストレスが溜まるのです」と、お話を伺った大建工業の碇山さん。

【画像2】「頑丈に設計していますが壁に金具で後付けする形なので、簡単に猫用リフォームができます。滑り難く、お掃除しやすい素材です」(写真撮影:藤井繁子)

【画像2】「頑丈に設計していますが壁に金具で後付けする形なので、簡単に猫用リフォームができます。滑り難く、お掃除しやすい素材です」(写真撮影:藤井繁子)

筆者の愛猫も外には出ないので、1階から2階、ロフトまで階段を飛ぶように駆け上がる。若いころはモモンガか!?と思うほどのジャンプ力でソファも飛び越えた。

【画像3】愛猫クレオパトラ(16歳)は銀座の捨て猫、今はウチの女王様(写真撮影:藤井繁子)

【画像3】愛猫クレオパトラ(16歳)は銀座の捨て猫、今はウチの女王様(写真撮影:藤井繁子)

「冷暖房の効率を考えて部屋のドアを閉めることが多いと思うので、猫が自由に出入りするためのペットドアを付けてあげると、活動的な猫のストレスを軽減できます」

【画像4】半透明の柔らかいドアになり猫が挟まって怪我をしない、気配が感じられるのでドア開閉時にも安心などの工夫が新しくなったペットドア(画像提供:大建工業)

【画像4】半透明の柔らかいドアになり猫が挟まって怪我をしない、気配が感じられるのでドア開閉時にも安心などの工夫が新しくなったペットドア(画像提供:大建工業)

あと、猫の問題は爪研ぎ。我が家の布製ソファはボロボロ…引っかかりが良いとやられてしまう!壁は塗り壁なので、滑るからか全く引っかかない。
「クロス貼りの壁だと引っかきますので、手の届く高さまで腰壁を貼ることをお勧めします」

【画像5】腰壁として後付けリフォームできる、傷や汚れに強いパネル。猫もひっかけ無いにゃん! 写真左上と比べるとその差がよく分かる(画像提供:大建工業)

【画像5】腰壁として後付けリフォームできる、傷や汚れに強いパネル。猫もひっかけ無いにゃん! 写真左上と比べるとその差がよく分かる(画像提供:大建工業)

犬は猫と違って、家で走ると危険がイッパイ!

「ペット用の建材で一番大事なのは床です」と、碇山さん。「猫と犬の肉球はグリップ力が全く違ったり、猫は吐く習性があったりと、犬と猫に求められる床材の機能も異なります」
確かに、筆者宅の階段も犬が来てから画像6のようなすべり止めシートを貼った。

【画像6】愛犬エリザベス(推定10歳)は虐待から保護したコーギー。短足なので階段は苦手… この一部シートだと格好悪いし掃除もしにくい(写真撮影:藤井繁子)

【画像6】愛犬エリザベス(推定10歳)は虐待から保護したコーギー。短足なので階段は苦手… この一部シートだと格好悪いし掃除もしにくい(写真撮影:藤井繁子)

猫は勢い良く”キュっ、キュっ”と音を立てて走るほどグリップが効いているが、犬はお座りをしていても、フローリングだと前足が徐々に外へすべりながら開いていく。これが犬猫の肉球!リアル…

【画像7】左:猫のウェットで柔らかい肉球 右:犬のドライで硬い肉球、間から毛が伸びてくるので切らないと滑る(写真撮影:藤井繁子)

【画像7】左:猫のウェットで柔らかい肉球 右:犬のドライで硬い肉球、間から毛が伸びてくるので切らないと滑る(写真撮影:藤井繁子)

「犬がフローリングで生活するのは、人が氷の上で立っているのと同じ感覚。股関節や腰を痛めるワンちゃんは多いです。カーペットの方がすべりませんが、汚れや掃除の面からフローリングが好まれますので、すべり難いペット用フローリングが人気です。
特に犬も高齢になると足腰が弱くなり、自分の体重を支えるのも難しくなってくるので滑りにくい床材は必需になりますね」

【画像8】表面にすべりにくい加工をしたフローリング材「ワンラブフロアⅡ」。キズや汚れにも強いのでお手入れも簡単(画像提供:大建工業)

【画像8】表面にすべりにくい加工をしたフローリング材「ワンラブフロアⅡ」。キズや汚れにも強いのでお手入れも簡単(画像提供:大建工業)

【画像9】現在の床を剥がすことなく、両面テープで上から貼れるリフォーム用フローリング材(ワンパークフロアスリム)もある(画像提供:大建工業)

【画像9】現在の床を剥がすことなく、両面テープで上から貼れるリフォーム用フローリング材(ワンパークフロアスリム)もある(画像提供:大建工業)

あるいは、ペット用マットをワンちゃんが主に行き来するところだけに敷くのも手軽にできる対策。

【画像10】おしっこなどで汚れてもマット1枚単位で水洗いが可能。アンモニア消臭&アレル物質抑制機能を備えた多機能カーペット「 ワンパークマット」(画像提供:大建工業)

【画像10】おしっこなどで汚れてもマット1枚単位で水洗いが可能。アンモニア消臭&アレル物質抑制機能を備えた多機能カーペット「 ワンパークマット」(画像提供:大建工業)

高機能の置き畳もペットに適した商品。防汚加工されていて撥水性にも優れ、濡れてもはじいて拭きやすい。カビ/ダニの発生率も低い点がうれしい。

【画像11】床材や置き畳、壁材や窓も合わせて見ることができる。DAIKEN新宿ショールームのペットコーナーにて(写真撮影:藤井繁子)

【画像11】床材や置き畳、壁材や窓も合わせて見ることができる。DAIKEN新宿ショールームのペットコーナーにて(写真撮影:藤井繁子)

「あと、ペットがいるご家庭で利用される住宅設備では、臭いや湿度など空気環境を整える壁・天井材や換気システムがあります」と、多彩なペットと快適に暮らすための商品を見せていただいた。

【画像12】キズがつきにくく防汚加工されたペットパネルを設置した収納ユニットでペットの居場所をつくる(ミセル ペットパネル)トイレやケージの配置に活用できる(画像提供:大建工業)

【画像12】キズがつきにくく防汚加工されたペットパネルを設置した収納ユニットでペットの居場所をつくる(ミセル ペットパネル)トイレやケージの配置に活用できる(画像提供:大建工業)

犬も猫もストレスが溜ると、吠えたり鳴き叫んだり、言うことをきかない問題児になってしまう。特に10歳未満の若い間は、十分な運動やじゃれ合いなどでストレス発散が必要だし、高齢になると滑ったり落ちたりしないよう住まいのケアが必要だ。
ペットにとって安心安全な住まいは、ペットから癒やしをもらう飼い主にとっても快適な住まいになるはずだ。

【画像13】ウチの女王様2匹は、ご主人様の側が一番大好きな居場所…(写真撮影:藤井繁子)

【画像13】ウチの女王様2匹は、ご主人様の側が一番大好きな居場所…(写真撮影:藤井繁子)

●取材協力
・大建工業株式会社元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109685_main.jpg

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SUUMO調べ、引越し後の片付け期間、2位「1カ月程度」 1位は?

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131回「SUUMOなんでもランキング」

(株)リクルート住まいカンパニー(東京都千代田区)が運営する不動産・住宅サイト『SUUMO(スーモ)』は、住まいや暮らしに関する様々なテーマについてアンケート調査を実施し、調査結果を「SUUMOなんでもランキング」として紹介している。新年度に合わせて引越しをした人も多いこの時期。片付けが終わっている人も終わっていない人も、みんな片付けにどれぐらいの日数をかけているのだろう? そこで今回は「引越した後の片付け。どれぐらいの日数かける?」をテーマに行った調査結果のランキング。

【調査概要】
●調査実施時期:2015年10月3日~2015年10月5日
●調査対象者:全国の20~59歳までの男性208名・女性208名
●調査方法:インターネット
●有効回答数:416

【調査結果】
Q.引越した後の片付け。どれぐらいの日数かける?(単一回答)
1位:1週間程度 23.8%
2位:1カ月程度 16.6%
3位:2~3日程度 16.1%
4位:その日のうちに片付ける 9.6%
5位:2週間程度 8.9%
※上位5位まで表示

第1位は「1週間程度」。「このくらいには終えて、新居でのリズムを整えたい」という人や、「1週間をめどにしないと、どんどん先延ばしにして片付かないと思うから」という人がほとんど。確かに期限を決めないと、ずるずると段ボールの山の中で生活してしまいそう。

第2位はまさにそんな人たちで「1カ月程度」。「とりあえず、必要なものを先に片付けて、後はレイアウトなどをゆっくり考えながら片付けたい」という理由はあるものの、「すぐ休憩してしまう」「なかなかやる気が起こらない」というなまけもの派のコメントが多数だった。

第3位は「2~3日程度」、第4位は「その日のうちに片付ける」と、なかなか優秀な回答。「段ボールを早くなくしたい」「いつまでもだらだらと片付かないのは不便なので早目に片付けたい」とのこと。「2~3日程度」かけているけど、「もっと早く終わらせたい」という人もいた。

まとめると、どうやら「1週間」がひとつの区切りのよう。49.5%もの人が1週間以内に片付け終わっていることが分かった。早めに片付ければ、新生活も爽やかにスタートできる。

一方で、「季節が一周しないと洋服が片付かない」「引越しをして10年以上たつが、まだ開けていない段ボールがある」といったツワモノも。どうも、「1週間以内に片付けるささっと派」と、「1週間以上かけるダラダラ派」に世の中は二分されているようだ。あなたはどちら派?

【主な回答】
●その日のうちに片付ける:物が置いてあるのが許せないので、その日にあったことはその日のうちに。(28歳・女性)
●その日のうちに片付ける:早く楽になりたい。(33歳・男性)
●2~3日程度:できるだけ、元の生活に早く戻したい。(38歳・女性)
●2~3日程度:当日は疲れているので、全部は無理。でも、すぐに片付けたい。(56歳・男性)
●1週間程度:一週間をめどにしないと、どんどん先延ばしにして片付かないと思うから。(47歳・女性)
●1週間程度:ある程度平日で片付けて、細かいところは土日をかけて一気に片付けたい。(29歳・男性)
●2週間程度:初めは張り切って頑張るが、生活に必要な最低限の物を整理すると急にやる気が失せる。段ボールが邪魔なので、少しずつやっていると2週間程度かかる。(41歳・女性)
●1カ月程度:1カ月使わなくて困らなかったものは捨てる。(39歳・男性)
●1カ月程度:平日は仕事。土日は子どもがいるのでできない。子どもたち全員が寝た後に片付ける。(33歳・女性)
●その他:1年以上/未だに開けていない段ボールがある。(52歳・男性)
●その他:1年以上/季節が一周しないと洋服が片付かない。(43歳・女性)

「SUUMOなんでもランキング」コーナー:住まいに関する様々なテーマについてアンケートを実施し、結果をまとめた記事を隔週で発表。

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首都圏の私大生の平均家賃は6万1200円、どんな物件がある?

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首都圏の私大生の平均家賃は6万1200円、どんな物件がある?

東京私大教連が公表した「2015年度 私立大学新入生の家計負担調査」によると、私大生への仕送りの額は11年連続で過去最低を更新し、家賃は仕送りのうち7割を超える重い負担となっていることが分かった。新入生の私大生を持つ家庭の家計事情と今の賃貸事情を詳しくみていこう。【今週の住活トピック】
「2015年度 私立大学新入生の家計負担調査」を公表/東京私大教連中央執行委員会(東京私大教連)自宅外通学者では住宅費関連の費用が減少、仕送りの7割を占める家賃の負担は重い

東京私大教連の調査の対象は、首都圏の私立大学・短期大学(東京都11校、神奈川県1校、埼玉県1校、千葉県2校、茨城県1校)に2015年4月に入学した新入生の家庭。

受験から入学までの費用は、自宅通学者が153万5844円(前年度比で4800円減額)、自宅外通学者が214万2644円(前年度比で5500円増額)となった。増額となった自宅外通学者の内訳を見ると、家賃と敷金・礼金の住宅費関連はむしろ減額となっている点が注目される。

【画像1】受験から入学までの費用(住居別)(出典:東京私大教連「2015年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)

【画像1】受験から入学までの費用(住居別)(出典:東京私大教連「2015年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)

新入生家庭の世帯の平均「税込年収」は、自宅通学者が898万円(前年度より15万円減)、自宅外通学者が900万9000円(前年度より12万8000円増)だった。自宅外通学者の世帯年収が増えているが、仕送り額(4月~12月)は81万500円で前年度より1万3800円減っている。

「仕送り額」の月額平均は、入学直後の新生活や教材の準備で費用がかさむ「5月」が10万1800円(前年度より600円減)、出費が落ちつく「6月以降」が8万6700円(前年度より1800円減)でいずれも減少し、6月以降の月額平均の仕送り額は、11年連続で過去最低を更新する結果となった。

一方「家賃」の月額平均は、6万1200円と前年度より400円減少したが、「6月以降」の仕送り額8万6700円に占める「家賃」の割合は70.6%で過去最高となり、仕送り額に占める割合は初めて7割を超えることとなった。

【画像2】6月以降の仕送り額(月平均)の推移(出典:東京私大教連「2015年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)

【画像2】6月以降の仕送り額(月平均)の推移(出典:東京私大教連「2015年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)

家賃の平均月額6万1200円で借りられる賃貸物件はどんなものか

では、家賃6万1200円というと、どんな賃貸になるのだろうか? 「SUUMO」で家賃(共益費等込み)が「6万円~6.5万円以下」の賃貸を検索してみよう。

例えば、常に人気駅ランキング上位に挙がるJR中央線の「吉祥寺駅」徒歩10分でも、借りることができる家賃だろうか?検索したところ、約430件が該当した。築15年以内は数物件しかなく、大半は築15年を越える。間取りはワンルームか1Kで広さは20m2前後、築40年を超えると2Kの20m2台後半のものがある、といった具合だ。

人気の吉祥寺でも6万円~6.5万円以下の賃貸が意外に多いという印象を持ったが、古いアパートの占める割合が多いので、試しに「オートロック」が付いている物件に限定してみると、10件に物件が減った。女子学生を想定すると、親としてはセキュリティが気になるものだ。設備面のレベルを求めると、通学圏を広げる必要がありそうだ。

今度は私鉄に目を向け、京王線の「調布駅」徒歩10分以内で探してみた。約180件が該当したが、やはり築15年未満以内は少なく、築20年代、1K・1DKの20m2台が中心となり、吉祥寺よりは築年が浅く、マンションが増える傾向があった。「オートロック」に限定にすると19件となった。

思い切って東京23区内で下町、「2016年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版」の、「穴場だと思う街ランキング」で2年連続1位となっているJR常磐線の「北千住駅」徒歩10分以内はどうだろう? 約190件が該当したが、築10年以内のアパートなども比較的多い一方で、築40年を超えるマンションやアパートも多い。中心は築20年代・30年代のアパートだが20m2前後のものが多く、30m2を超えるものはそれほど多くはない。吉祥寺よりは多少狭くなるといった印象だ。ただし、「オートロック」に限定すると61件と、他のエリアより多いのが特徴だ。

(※物件数は2016年4月18日現在)

私大生が通学しやすい大きな駅を選んで検索してみたが、東京の私大生が平均的な家賃で賃貸住宅を借りようとしても、選択肢は広いことが分かった。駅からの距離、築年数、広さ、マンションかアパートかといった建物の条件に加え、バストイレ別、風呂の追い焚き機能付き、オートロック、インターネット接続状況、宅配ボックスなど設備の条件によって、実際に探せる物件は変わってくる。

家計に無理のない範囲で、優先順位を付けながら物件を探し、実際に立地や建物、室内を確認して絞り込むということになるだろう。

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価格・品質・間取り・省エネ 「注文住宅」を選ぶ4つの理由

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価格・品質・間取り・省エネ 「注文住宅」を選ぶ4つの理由

注文住宅、新築一戸建て、中古一戸建て、新築マンション、中古マンション……。新居を得る方法はいくつもあるが、その中から「注文住宅」をピックアップして、そのメリットを紹介しよう。
マンションに比べて 一戸建ては価格上昇が緩やか

住宅種別ごとの価格の動きを見ると、新築マンションの上昇幅が大きいことがわかる。特にこの2年間ではそれが顕著で、2015年の首都圏平均だと前年比で9.1%アップ。全国平均でも7.2%アップを記録している。

中古マンションも新築マンションに連動した動きを見せるケースが多く、この数年間はやはり値上がり傾向にある。
一方、新築一戸建ては新築マンションに比べると価格推移が緩やかで、同様に注文住宅建築費も変動幅が少ないことがわかる。マンションと一戸建てを対比すると、平均価格からみて一戸建てのほうが手の届きやすい傾向にあると言えるだろう。

【図表1】各住宅種別の価格推移(出典:新築マンションの平均価格は不動産経済研究所調べ/新築(分譲)一戸建ての平均価格は東日本不動産流通機構調べ/注文住宅建築費は国土交通省調べ/※いずれも現在の価格とは異なる場合がある)(イラスト:加納徳博)

【図表1】各住宅種別の価格推移(出典:新築マンションの平均価格は不動産経済研究所調べ/新築(分譲)一戸建ての平均価格は東日本不動産流通機構調べ/注文住宅建築費は国土交通省調べ/※いずれも現在の価格とは異なる場合がある)(イラスト:加納徳博)

素材や構造を納得して選べるので、品質をコントロールしやすい

長く住む家だからこそ、構造や素材が堅固で、安心して暮らせる建物の品質を確保したいもの。それを自分でコントロールしやすいのは、注文住宅の特徴のひとつ。

モデルハウスや工場見学会を利用して、自分で住宅の品質を確かめてから信頼できる住宅メーカーに依頼できる。加えて施主と依頼先の距離が近いので、密なコミュニケーションを図りやすく、不安な点にも細かく対応してもらいやすい。

建築中も、現場に足を運べば互いに確認しながら家を建てられる。予算のバランスをとりつつ、素材や構造も自分で選択できるので安心感を得られるのだ。

【画像1】品質をコントロールできる3つのポイント。(1)親身になって話を聞いてもらいやすい (2)構造や素材などを自分で選べる (3)信頼できる住宅メーカーに依頼できる(イラスト:加納徳博)

【画像1】品質をコントロールできる3つのポイント。(1)親身になって話を聞いてもらいやすい (2)構造や素材などを自分で選べる (3)信頼できる住宅メーカーに依頼できる(イラスト:加納徳博)

親と同居するなら柔軟にプランニングできる注文住宅はおすすめ

親と同居するための多世帯住宅が増えているが、その理由としてアンケート(※)で最も多かったのがコスト面のメリットだ。住居費・光熱費・食費などの生活費を節約できること、土地・建築資金を分け合えたこと、「同居ならば」と親からの援助金を増やしてもらえたことなどが挙げられた。また、いつも身寄りがいる安心感、家事・育児面での親の協力、親の介護のしやすさも同居の魅力になっている。

しかし、多世帯住宅は親子で異なるライフスタイルを反映する必要があり、プランが複雑になりがちだ。その点、希望に合わせて一からつくり上げる注文住宅は、同居の恩恵と暮らしやすさを両立させる近道といえるだろう。

※調査概要1年以内に注文住宅を建てた男女へのアンケート調査(マクロミル調べ、有効回答数1641人)

国の後押しを受けて高まる エコ機運に対応しやすい注文住宅

政府は2020年を目標に、標準的な住宅で「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」の実現を推進している。ZEHとは、断熱・省エネ・創エネ・蓄エネなどの機能により、住まいにおける消費エネルギーをほぼゼロにできる住宅のこと。ランニングコストの収支がほぼゼロになるのが魅力だ。

しかし、それを実現するための各種設備は後から導入しにくいため、設計段階から要望を反映できる注文住宅は、最もZEHを実現しやすいといえる。

加えてエネルギー消費量の「見える化」により、日々の電気の使い方が簡単にわかるため、4月に導入された「電力自由化」では、自分たちの使い方に合うものを選びやすい点も有利になるだろう。

【画像2】ネット・ゼロ・エネルギー住宅(ZEH)実現のポイント(イラスト:加納徳博)

【画像2】ネット・ゼロ・エネルギー住宅(ZEH)実現のポイント(イラスト:加納徳博)

●ネット・ゼロ・エネルギー住宅(ZEH)実現のポイント
<省エネ>
(1)日射遮蔽(しゃへい) …夏と冬で異なる日射角度に合わせて、軒や庇(ひさし)で夏場の日差しを遮り、冬場は室内の奥まで日の暖かさを取り入れる設計
(2)落葉樹…夏の日差しを遮り、冬は落葉した枝の間から日差しを取り入れられるよう、南側に落葉樹を植樹
(3)高効率給湯設備…自宅で発電したり、少ないエネルギーで効率的にお湯をつくり出す給湯器や燃料電池の採用
(4)HEMS…エネルギーの使用量や使用状況をいつでも確認できる「見える化」設備。省エネ意識が高まる
(5)常緑樹…北風を遮る防風林の植樹。室内環境の維持に貢献
(6)省エネ換気設備…室内と屋外の温度差を利用したハイブリッド換気システムなど、少ないエネルギーで24時間換気ができる設備の採用
(7)通風塔…開閉式のトップライトの採用。空気の流れをつくり出し、上昇気流に乗って建物上部にたまる熱を排熱できる
(8)高効率空調設備…少ないエネルギーで室内を快適な温度にできるエアコンなどの採用
(9)高効率照明設備…少ないエネルギーで必要な明るさを得られるLED照明などの採用

<蓄エネ>
(10)家庭用蓄電池…自家発電のエネルギーをためる家庭用蓄電池。暮らしに合わせて効率的にエネルギーを使用できる

<創エネ>
(11)太陽光発電システム…太陽熱を利用する発電システムなど、再生可能なエネルギーシステムの採用

<断熱>
(12)躯体の断熱…気密断熱性の高い窓・サッシを採用。躯体に十分な断熱材を入れ、外壁や屋根も断熱性の高いものを採用

マンション価格が高騰する中、一戸建ては価格推移が緩やかなので、予算をイメージしやすいといえそう。
中でも注文住宅は、素材や構造の選択肢が多く、自分で信頼できるものを選べるから、クオリティをコントロールできる。同居のような複雑な間取りにも対応可能なプランニングの自由度も魅力的。後から導入しにくいエコ設備も検討しやすく、プラン面でも建築面でも先々まで安心な納得の住まいを実現できるのではないだろうか。

文/樋口由香里 イラスト/加納徳博

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実録・実家のたたみ方[前] 売却の決意と賃貸探し

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実録・実家のたたみ方[前] 両親だけの生活に不安…引越すことに

地方の実家に両親だけが住んでいるが、子どもは実家に戻るつもりはない。「いずれ空き家になるけど、どうしたらいい?」こんな悩みを抱えている人は多い。両親の住む実家をたたんで、トラック17台分の家財を処分した体験をもつKさんの事例を基に考えてみよう。前編では、実家をたたむことになる経緯について紹介する。
両親だけの生活に不安。実家をたたんで近居で様子を見ることに

Kさんの実家は島根県にある。兄と姉、Kさん自身は東京や大阪に仕事も家庭もあるため、いずれも実家に戻る予定はない。実家には両親だけが暮らしているのだが、正月に久しぶりに実家に帰省したKさんは、あることに気づいた。

両親、特に父の物忘れがひどくなっていて、認知症を疑う兆候が見られた。また、母も家事がおろそかになり、家の中は雑然としていた。不安になったKさんが試しに電話料金の請求書を確認してみると、ADSLと光回線を両方契約しているなど、無駄な契約を勧められるままに交わしていることが分かった。

このまま両親だけで暮らすことに不安を感じ、すぐに兄と姉に相談をした。その結果、両親には兄の家の近くに引越してもらい、兄が近くで両親の様子を見られるように、実家の整理と売却をすすめることになった。

円滑に進められるように、近居のための物件の手配を兄が、両親の説得を姉が、実家の売却をKさんが担当すると、兄弟間の役割分担を決めることにした。

近居のための賃貸住宅を決めたが、問題は実家の家財の処分

まずは、兄の家の周辺に両親の住む賃貸住宅を探すことにした。その年の3月末までに決めるという期限を設け、賃料は両親が年金だけで暮らせる金額というのを条件にした。実際に4~5物件を両親に見てもらい、URの団地内の1階住戸で、3Kの間取り、賃料が約4万円の物件に決めた。

買い物などにも便利な立地であること、高齢者が住みやすいようにバリアフリー(床の段差をなくし、要所に手すりを設置)や緊急コールボタン付きのリフォームがしてある「高齢者向けの優良賃貸住宅(高優賃)」であることなどが決め手になった。

【画像1】両親が住み替える賃貸住宅の間取り(画像提供:Kさん)

【画像1】両親が住み替える賃貸住宅の間取り(画像提供:Kさん)

問題は、6LDKの一戸建ての実家から3Kの賃貸に引越すと広さは5分の1程度になるため、家財の大半を処分する必要があることだ。引越しはGW(ゴールデンウィーク)と決めて、それまでに家財の処分をしようと、両親に整理をしておくように頼んでおいた。

実家の売却を担当するKさんは地元の不動産会社に連絡して、売却の相談を始めた。実家を査定してもらったところ、査定額は600万円。ただし、モノがなくなってからでないと媒介契約を交わせないといわれ、家財の処分をしないと売却がスタートしないことが分かった。

後編は、なかなか荷物が減らない実家の片付けをどのようにしたのかを紹介する。

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実録・実家のたたみ方[後編] 捨てた家財はトラック17台分

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実録・実家のたたみ方[後] トラック17台分を捨てても足りない

両親の住む実家をたたむ体験をした、Kさんの事例を紹介。前編は実家を手放すと決めた経緯と、両親が住むための賃貸住宅探しを紹介した。後編は実家をたたむ過程の一番の難関である「実家の片付け」を紹介しよう。
実家の家財の処分に、焼却施設まで車で17往復

実家の整理と売却を担当することになったKさん。不動産会社から「家財の処分をしないと実家の売却ができない」と言われた一方で、両親の家財の整理は進まないことに困惑した。要・不要の判断がなかなかできないうえ、体力的に物を移動させることが難しかったからだ。不用品回収業者に見積もりを取ってもみたが、費用は60万円と高額なうえ選別せずにただ処分するだけということなので、Kさんは自分でやろうと決めた。

家財の処分で決めたことは2つある。
(1)ルールを決めて振り分ける
・家族の思い出の品は残す
・貴重品に該当するものは残す
それ以外は処分する
(2)処分方法に迷うものはその都度スマホで撮影し、兄と姉にSNSを活用して即時に意見を求める

両親が住む新居には、必要な家具家電を新たに買いそろえることにしたので、実家の家財は基本的にはほとんど処分するのが前提だ。祖父の図書資料などは価値がありそうだったので、地元の図書館に寄付を決めた。契約書類は確認して、不要な契約は解除した。兄や姉、Kさんがそれぞれ手元に置きたいものも選別していった。

【画像1】なかなか片付かない実家(画像提供:Kさん)

【画像1】なかなか片付かない実家(画像提供:Kさん)

こうしてKさんは4月の週末に2回帰省し、GWに入ってからも2日間をかけて、家財を振り分けてまとめ、1トントラックを借りて焼却施設に持ち込み、処分を依頼することの繰り返しで、実に17往復をした。ただし、大型家具だけは、処分を業者に10万円で委託した。

【画像2】片付ける前の今の様子(画像提供:Kさん)

【画像2】片付ける前の今の様子(画像提供:Kさん)

【画像3】居間になっていた居室を片付けたらこの広さになった(画像提供:Kさん)

【画像3】居間になっていた居室を片付けたらこの広さになった(画像提供:Kさん)

【画像4】ダイニングルームも大型家具のみを残せばすっきり(画像提供:Kさん)

【画像4】ダイニングルームも大型家具のみを残せばすっきり(画像提供:Kさん)

いよいよ引越し。でもまだ荷物が多い

実は家財の処分については、母は新居に持ち込んだり近所にあげたりして、捨てずに取っておきたい気持ちが強かった。引越し当日は「ご近所とのお別れタイム」を3時間設けたが、ご近所さんがそれより前から集まってくれて、一部の家財を引き取ってくれたりもした。

それでも母が「布団は捨てられない」などとこだわったので、引越し荷物は単身引越しパック3個分とかなり多くなった。とりあえず新居まで運んでしまい、到着したら新居の広さと荷物の量を両親に見てもらい、「入らない量である」と確認してもらってから、兄の家で両親に休んでもらっている間に、姉が不要なものを処分するという段取りにした。

両親を見送ったKさんは、1泊して思い出のある実家を1日半かけてきれいに掃除した。その後、不動産会社と媒介契約を結んで売り出しを開始した。不動産会社がリフォームして販売するといって、5月中に550万円で買い取った。

【画像5】丁寧に掃除をして、売りやすくかつ、外から見て空き家と分からないような状態にした(画像提供:Kさん)

【画像5】丁寧に掃除をして、売りやすくかつ、外から見て空き家と分からないような状態にした(画像提供:Kさん)

すべてが済んだKさんは、「あと5年早い後期高齢者になる前であれば、両親の判断力や体力もあったので、もっと処分が楽だった」と振り返る。両親もつらかったようで、よく「引越しの前後のことは覚えていない」と言うそうだ。兄は「処分はなんとか終わったが、捨てるものと残すものの判断に時間がかけられず、結果的に残した方がよかったと思うものもあった」と後悔もある。
それでも、無事に実家をたたむことができたのは、兄弟姉妹で役割分担や情報共有をして、「両親の承認を得ながらも、強い意志を持って対応できたから」だと語った。

幸い新居での生活を始めた両親は、実家にいたときより外出する機会が増え、以前より活動的になっていった。地元を離れたのは寂しいものの、煩わしさから解放された面もあったようだ。
これから実家をたたむことを考えている人にとって、Kさんの体験は参考になる点がたくさんあるはずだ。

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築44年・団地住民の住まいの困りごとを「お手軽DIY」で解決

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築44年マンモス団地住民の“住まいの困りごと”を解決できるDIYとは?

全国屈指の規模を誇るマンモス団地「UR高島平団地」。8287戸に1万人以上が住む団地の敷地内には、大型スーパーや商店街、保育園や公園広場もそろう。都心へのアクセスも便利なことから、昭和47年に入居がスタートした直後は応募が殺到したといわれる。
しかし、それから44年。経年による老朽化は否めず、悩みや不安を抱える住民も少なくない。そこで、ちょっとした“補修のコツ”や、住まいのアップグレードにつながる“お手軽DIY”を学べるワークショップが同団地にて開催された。

アイデア勝負の”手間が掛からないDIY”を伝授

今回、暮らしの困りごとを改善する取り組みの一環で実施されたDIYワークショップは、「ふすまの張り替え」「窓まわりの結露対策」「壁のペイント」の3つ。いずれも特別な工具は不要で、子どもからシニアまで手軽に行うことができるDIYだ。

【画像1】ふすまの張り替えで用意されていたのは、「壁紙」「マスキングテープ」「両面テープ」そしてカッターとはさみだけ。自分好みに簡単にデコレーションすることができる(ただし退去時に敷金からふすま代を精算する形で原状回復が必要)(写真撮影/末吉陽子)

【画像1】ふすまの張り替えで用意されていたのは、「壁紙」「マスキングテープ」「両面テープ」そしてカッターとはさみだけ。自分好みに簡単にデコレーションすることができる(ただし退去時に敷金からふすま代を精算する形で原状回復が必要)(写真撮影/末吉陽子)

【画像2】レクチャーを受けながら、子どもと一緒におよそ10分で張り替え完了! ふすまを変えるだけで部屋の印象もガラリと変わるものだ(写真撮影/末吉陽子)

【画像2】レクチャーを受けながら、子どもと一緒におよそ10分で張り替え完了! ふすまを変えるだけで部屋の印象もガラリと変わるものだ(写真撮影/末吉陽子)

【画像3】空気層をつくって冷気をブロックする「窓ガラス断熱デザインシート」や、発生した結露を吸い取ってくれる「結露吸水テープ」など、住まいのメンテナンスアイテムや省エネアイテムなどを開発するニトムズが製品を展示し、貼り方のコツをレクチャー(写真撮影/末吉陽子)

【画像3】空気層をつくって冷気をブロックする「窓ガラス断熱デザインシート」や、発生した結露を吸い取ってくれる「結露吸水テープ」など、住まいのメンテナンスアイテムや省エネアイテムなどを開発するニトムズが製品を展示し、貼り方のコツをレクチャー(写真撮影/末吉陽子)

【画像4】会場ではニトムズ製品の物販も実施。窓ガラスのサイズに合わせてカットし、霧吹きなどで湿らせた窓に装着するだけの簡単なDIYとあって、結露によるカビを気にする住民に好評だった(写真撮影/末吉陽子)

【画像4】会場ではニトムズ製品の物販も実施。窓ガラスのサイズに合わせてカットし、霧吹きなどで湿らせた窓に装着するだけの簡単なDIYとあって、結露によるカビを気にする住民に好評だった(写真撮影/末吉陽子)

【画像5】これらはいわば、劣化や結露によるカビ防止といった、生活の「困りごと」を解消するためのDIY。今回はそれに加え、自分の手で暮らしに彩りをプラスする、いわばDIYのチカラで生活をアップグレードするためのワークショップも同時に実施された(画像提供/UR都市機構)

【画像5】これらはいわば、劣化や結露によるカビ防止といった、生活の「困りごと」を解消するためのDIY。今回はそれに加え、自分の手で暮らしに彩りをプラスする、いわばDIYのチカラで生活をアップグレードするためのワークショップも同時に実施された(画像提供/UR都市機構)

【画像6】アンティークやフレンチスタイルの空間づくりが人気のデザイン会社「夏水組」がプロデュースしたdecolfaシリーズのタイルステッカーで、キッチンまわりをデコレーション。シールタイプのタイルなので剥がして貼るだけという手軽さが魅力だ(画像提供/UR都市機構)

【画像6】アンティークやフレンチスタイルの空間づくりが人気のデザイン会社「夏水組」がプロデュースしたdecolfaシリーズのタイルステッカーで、キッチンまわりをデコレーション。シールタイプのタイルなので剥がして貼るだけという手軽さが魅力だ(画像提供/UR都市機構)

【画像7】ほっこりする暮らしアイテムを手づくりする創作家「トントンちくちく」が手掛けた、エプロンづくりワークショップは子どもたちからも大好評(写真撮影/末吉陽子)

【画像7】ほっこりする暮らしアイテムを手づくりする創作家「トントンちくちく」が手掛けた、エプロンづくりワークショップは子どもたちからも大好評(写真撮影/末吉陽子)

【画像8】ヒノキの間伐材を使用した「ヒトテマキット」は、その名の通り、自分の手でけずって磨くというひと手間をくわえてつくる木の食器。手づくりした物には、既製品に対するものとは違う愛着が湧くものだ(写真撮影/末吉陽子)

【画像8】ヒノキの間伐材を使用した「ヒトテマキット」は、その名の通り、自分の手でけずって磨くというひと手間をくわえてつくる木の食器。手づくりした物には、既製品に対するものとは違う愛着が湧くものだ(写真撮影/末吉陽子)

高島平団地の住民たちが住まいに望むこととは?

当日は多くの住民が参加しにぎわいを見せていたが、実際に団地に暮らす人々はどのようなことを希望してワークショップに足を運んでいるのだろうか? 参加者の声を聞いてみた。

「窓ガラスに結露が発生し、カーテンが張りついてしまうのが悩みです。以前、結露防止シートを貼ったことがあるのですが、シートにカビが発生しまったり、剥がそうとしたら装着した跡がついてしまったりして、見栄えが悪くなってしまいました。今は何の対策もしていないので、良い製品があればと期待して見にきました」

およそ40年前の住宅とあって、サッシや窓ガラスの断熱性能が現在より劣ることは否めない。自己流の対策には限界があるため、今回のようにプロの指南を受けられる機会は貴重だと語ってくれた。一方で、今後のDIYワークショップについて、具体的な要望も。

「収納がかなり大きく設計されているのはいいのですが、既製品の収納ボックスのサイズが合わないことが多くて、デッドスペースが増えがちなんです。収納スペースを有効活用できるように高さ調節ができる棚などを、DIYでつくるためのワークショップがあるといいなとは思います」

現代の生活様式に則していない古い物件も、工夫次第では快適な空間に生まれ変わらせることができるはず。こうした住民の声を一つひとつ拾い上げ、ライフスタイルやトレンドに合わせたワークショップをこれからも期待したいという。

とはいえ、いざDIYを実践するにあたっては、悩ましい課題もあるようだ。特に、大きな障壁となっているのが「原状回復」の問題や、URならではの細かい規定。子どものころから同団地に住んでいる30代の女性は次のように語る。

「例えば、老朽化した壁をペイントしたいと思っても、場所によっては原状回復が求められたり、塗っていい色も規定によって細かく指定されていたりします。DIYを行うための手続きも正直面倒ですね。ここでの暮らしや人間関係にはとても満足していてこれからも長く住み続けたいと思っていますが、やはり建物の老朽化は気になるところ。自分でできる修復は自分でやりたいと思っています。そのためにも、DIYにまつわるいろいろな規定が緩和されていくといいですね」

DIYは団地が輝きを取り戻すための起爆剤になり得るか

近年、注目度が高まってきたDIYだが、住まいや暮らしへの意識が高い人がオシャレな部屋をつくるための情報やイベントが多い印象だった。実際のところ、高島平団地のなかには原状回復義務を免除し、大規模なリノベーションができるようにフリーレント期間を設けている部屋もある。また、夏水組やDIYに詳しい女優の中田喜子さんとのコラボで、オシャレに生まれ変わった部屋もモデルルームとして公開されている。

しかし、これらはあくまでも新規入居者をターゲットにしたもの。今回高島平団地で行われたDIYワークショップのように、既存の住民に向け、いま住んでいる部屋の「困りごと」を取り除くための手段を紹介するのは新しい試みといえる。

もちろん、DIYを浸透させるためには、こうした取り組みだけではなく、DIYできる範囲やレベル、そして原状回復義務にまつわる規定も見直していくことも重要だろう。

築年数がたった賃貸住宅は「賃料が安くていいが住み心地の良さは期待できない」と思われがちである。しかし、入居者自らの創意工夫が部屋に反映され、それが既存住民全体の知恵として蓄積されていくことで、快適で愛着が持てる住まいへと進化していく可能性はあるはず。ひいては、団地内でそうした既存住民たちのコミュニティが育まれれば、住まい探しをする人にとって魅力を感じる要素になるかもしれない。

UR団地でのDIYワークショップは、これからも定期的に開催される予定だという。かつて団地が住まいの先端を走っていたころのように、新たなトレンドを発信する存在として再び注目される日が来ることを期待したい。

●UR高島平団地元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109738_main.jpg

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沖縄・小浜島のオバァに学ぶ、歳をとっても元気で暮らせる秘訣

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沖縄・小浜島のオバァに学ぶ、歳をとっても元気で暮らせる秘訣

沖縄・石垣島から高速船で約30分。NHK朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』で一躍有名になった「小浜島」がある。ここで暮らす平均年齢84歳のばあちゃん合唱団が国内外で注目を集めている。いつも笑顔で元気に歌って踊る、その姿に魅了される。なぜ、この島のオバァたちは、歳をとっても元気なのだろうか。その理由を探る。
80歳が合唱団の正式メンバーになる条件

「KBG84」。書き間違いではない。小浜島ばあちゃん合唱団。平均年齢84歳。略してKBG84だ。「天国に一番近いアイドル」がキャッチフレーズであるKBG84の正式メンバーになるには80歳以上であることが条件。80歳未満は研究生として活動を支える。島のオバァたちは、正式メンバーになれる80歳になるのを楽しみにしているのだ。

KBG84の活動は一過性のものでもなければ、イベントのときだけに借り出されるグループでもない。ごく日常的に集まっては歌や踊りのレッスンをしている。さらにいえば、小浜島にとどまらず、東京や大阪、札幌でもコンサートをするダンス&ヴォーカルユニットなのだ。

もともとは、島の高齢者が家に引きこもるのを防ぐために、発起人の花城キミさん(90歳)の一言ではじまった集まりだった。デイケアサービスの先駆けのような形のボランティア組織「うふだき会」がKBG84の前身。島でひとり暮らしをしている高齢者に声をかけ、食事会や茶飲み話をすることが当初の目的だった。でも、一番盛り上がったのは「初恋の話」だったという。いくつになっても、女性は恋話が元気の源なのかもしれない。

月に一度集まるうちに、昔の歌をみんなで歌ったり、歌が苦手な人は踊りを披露したりと、今の合唱団に繋がる活動をしていくようになったそうだ。

小浜島は、昔からの行事や伝統を大事にする島で、島の人は、みんな芸達者だ。若いころは、子育て、家事、農作業に追われていて、歌や踊りといった楽しみをする時間がなかった。それでも体が覚えている。ようやくすべてのものから解放されて、歌や踊りを楽しめるようになったのが今なわけで、練習にも熱が入る。80歳になってからの楽しさ、喜びを体全体で表現しているかのようだ。

【画像1】KBG84の練習風景。東京公演を前に練習に励むが、ちょっとしたことで笑顔がこぼれ、笑い声が響く。赤のポロシャツは正式メンバー。研修生は青のポロシャツ。座る位置も年の順で決まっている。いくつになっても、年下が年上を敬うのは当たり前と、お茶を出す順番も間違えてはいけない(写真撮影:伊藤加奈子)

【画像1】KBG84の練習風景。東京公演を前に練習に励むが、ちょっとしたことで笑顔がこぼれ、笑い声が響く。赤のポロシャツは正式メンバー。研修生は青のポロシャツ。座る位置も年の順で決まっている。いくつになっても、年下が年上を敬うのは当たり前と、お茶を出す順番も間違えてはいけない(写真撮影:伊藤加奈子)

【画像2】ボランティアでお昼のお弁当を用意する。島で採れた野菜を持ち寄り、煮つけにしたり、石垣島で買ったデザートを差し入れたりと、実に豪華なお弁当。この日はちょうど2カ月に一度の誕生日会。童心にかえったように全員でお祝いをする。年功序列はあるが、お誕生日会では、一人ひとりが主役(写真撮影:伊藤加奈子)

【画像2】ボランティアでお昼のお弁当を用意する。島で採れた野菜を持ち寄り、煮つけにしたり、石垣島で買ったデザートを差し入れたりと、実に豪華なお弁当。この日はちょうど2カ月に一度の誕生日会。童心にかえったように全員でお祝いをする。年功序列はあるが、お誕生日会では、一人ひとりが主役(写真撮影:伊藤加奈子)

97歳で初めて病院に行き、健康保険証を使う

合唱団のオバァたちは、「人生、80歳からが楽しいさあ」と言う。さらに驚くことに、「つらかった」と愚痴をこぼしたり、過去を振り返ったりはしない。「今、生きていることに感謝する。泣いていたら人は寄ってこない。だから笑顔で毎日を元気に暮らすことが一番」と口をそろえて言う。

当然、戦争を体験し、ツライ思いを抱えているはず。ましてや離島。戦後しばらくたっても、水道や電気は引かれることがなく、ないもの尽くし。現在では想像もつかないほど「不便」であったはずなのだ。それでも、つらかったとは言わない。

【画像3】(左)最高齢97歳の山城ハルさん。ゲートボールが趣味。島のはずれにあるゲートボール場まで歩いて通う。ある大会で準優勝したというツワモノだ。(右)山城ハルさんとともにセンターをはる92歳の目仲(めなか)トミさん。普段は杖が欠かせないが、ひとたび音楽が流れはじめると杖を放り投げて踊りだす、合唱団一のムードメーカー(写真撮影:西 秀一郎)

【画像3】(左)最高齢97歳の山城ハルさん。ゲートボールが趣味。島のはずれにあるゲートボール場まで歩いて通う。ある大会で準優勝したというツワモノだ。(右)山城ハルさんとともにセンターをはる92歳の目仲(めなか)トミさん。普段は杖が欠かせないが、ひとたび音楽が流れはじめると杖を放り投げて踊りだす、合唱団一のムードメーカー(写真撮影:西 秀一郎)

合唱団で最高齢の山城ハルさん(97歳)は、こう話す。

「ないのが当たり前。ないならつくればいい。塩も味噌も酢もなんでも自分たちでつくる。米も麦もつくる。それができる島の自然に感謝するわけです。今は何でも手に入りますが、だからと言って贅沢したいとは思いません。贅沢ってなんだろうと思うのです」

山城さんをはじめ、島の人は薬草の見分け方も知っている。風邪をひいたら煎じて飲む薬草、熱が出たら氷枕がわりにする植物、あせもができたら塗る草花、と島に自生するもので大概の病気は治してきたそうだ。笑い話のようだが、山城さんは97歳にして、初めて病院にかかり健康保険証を使ったそうだ。

何も民間療法や沖縄独特の風習ということではない。今でいう「地産地消」。その地に合ったものをつくり、食べ、少々の病気なら昔から島にある薬草で治してしまう。先人が長寿であるわけだから、同じように生活して体に悪いはずがない。

合唱団でセンターを務める目仲トミさん(92歳)も「この年になっても、毎日食事は自分でつくります。足腰丈夫で歩けること、食べられることが、ありがたいのです。朝起きてから1日のやるべきことは決まっています。その繰り返し。長生きしていることは、人生のごほうびだと思うから、毎日笑い、いっぱい食べるんです」と話す。

歳をとっても元気なのは、自分がやるべきこと、役割があるから

600人ほどの小さな島。サトキビ畑が一面に広がり、放牧されている牛がのんびりと草を食んでいる。田園風景の島なのだが、集落は意外と密集していて隣家が近い。しかし、過剰な干渉はしないのが暗黙のルール。集まりに来なくなれば声をかけに行くし、何の用事がなくても「ゆんたく(沖縄の方言でおしゃべり。井戸端会議のようなもの)」に行くこともある。でも必要以上に口出ししたり、手伝ったりすることはない。

「島では1年の行事が決まっています。それぞれの家の役割があり、自分の役割もあります。その行事を滞りなく執り行うために、1年前から、1カ月前から準備をするのです。だから1日1日をきちんと過ごさないと、1年後の行事ができなくなってしまいます。自分の家のことで精一杯なんですね。でも、みんな頑張っているのが分かるから、だから自分も頑張れるんだと思います」と、世話役の嘉手川昭子さんが説明してくれた。

合唱団の知恵袋的な存在の白保夏子さん(84歳)は、こう話す。

「野菜を育てたり、織物を織ったり、味噌をつくったりと、みんなひと通りのことはできます。でも得意なことが違います。そのほうが足りないところを補ったりして、助け合うことができるからです。歌や踊りもそうです。それぞれが得意なことなら、自信をもってできるのです。みんな同じで違いがなければ、色とりどりの花を咲かせることはできません。違いがあるからこそ、きれいな花がたくさん咲いて、みんなが喜ぶんじゃないかしら」

白保さんは、合唱団で地方に遠征するときなどは、率先して新しいことにチャレンジする「若手」としての役割もある。旅先のホテルの部屋の使い方が分からなければ、やってみる。使い方が分かれば、みんなに伝える。「周りの人は心配しますけど、何事も勉強。この歳になっても知らないことに出合う、そんな機会を設けてもらっていることに、うれしいという気持ちしかありません」

発起人の花城キミさんが、歳をとってからの自分の役割について、語ってくれた。

「例えば、機織りにしても、昔は、糸を紡ぎ、染色し、機織りし、着物に仕立てる、これを全部ひとりでするんです。家族全員分を。でも歳をとったらできませんね。だから糸巻きまでして後輩に譲るとか、自分が今できることをすればいいんです。できないからやらないんじゃない。できるって決めたら、できるんです」

【画像4】(左)小浜島は農業、漁業、畜産の島。あちらこちらで放牧中の黒牛に出合う。子どもたちは、仕事のために島を出てしまうので、ひとり暮らしの高齢者が多い。(右)島の西側からは、西表(いりおもて)島がすぐそばに見える。八重山の島々は、自然環境が異なるため同じ離島でも暮らしぶりは変わる。小浜島は真水が湧き出るため、昔から稲作も行われていた(写真撮影:伊藤加奈子)

【画像4】(左)小浜島は農業、漁業、畜産の島。あちらこちらで放牧中の黒牛に出合う。子どもたちは、仕事のために島を出てしまうので、ひとり暮らしの高齢者が多い。(右)島の西側からは、西表(いりおもて)島がすぐそばに見える。八重山の島々は、自然環境が異なるため同じ離島でも暮らしぶりは変わる。小浜島は真水が湧き出るため、昔から稲作も行われていた(写真撮影:伊藤加奈子)

【画像5】島の中央を貫く、通称「シュガーロード」。両脇にはサトウキビ畑が広がる。「島の道路が舗装されたのは最近。車がない時代は歩いてどこまでも行きました」と山城ハルさんは言う。山城さんは、今でもゲートボールに歩いて通う健脚の持ち主(写真撮影:伊藤加奈子)

【画像5】島の中央を貫く、通称「シュガーロード」。両脇にはサトウキビ畑が広がる。「島の道路が舗装されたのは最近。車がない時代は歩いてどこまでも行きました」と山城ハルさんは言う。山城さんは、今でもゲートボールに歩いて通う健脚の持ち主(写真撮影:伊藤加奈子)

「KBG84」のプロデューサーでシンガーソングライターの、つちだきくおさんに話を聞いた。

「とにかく元気。その元気さと笑い声に圧倒されます。月1回集まっての練習をサポートしているうちに、いつの間にか、うふだき会の正規メンバーに登録され、今では会長にさせられてしまいました(笑)。東京や大阪、札幌などでコンサートをするようになったのは、何気なく、僕のライブで歌って踊ってみる?と聞いたのが最初。全員が行く!と即答。そのエネルギー、パワーはどこから湧いてくるの?と思いますよ。
彼女たちの元気の秘訣は、前向きさじゃないでしょうか。僕たちが知りえない苦難の過去があったに違いありませんが、今を生きる、毎日を笑顔で過ごす。これに尽きるんじゃないでしょうか」

どうしたら元気で生活してもらえるのか、高齢の家族を持つ人は、あれこれと悩んでしまう。しかし、手厚い介護があれば元気でいられるとは限らない。手を差し伸べられる程よい距離感を保ちながら、自立した生活が送れる「何か」が必要なのかもしれない。それは、特別なことではなく、仲間が集まり、おしゃべりし、歌い、踊り、たくさん食べること。そして笑顔でいることが最大の元気の秘訣なのではないだろうか。

●取材協力
・ザ・カンパニー
・KBG84(YouTube)●参考資料
・『笑顔で花を咲かせませしょう』(KBG84著・幻冬舎刊)元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/09932_main.jpg

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「地価が値上がりしそうと思う街」は実際に地価が上昇したのか!?

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「地価が値上がりしそうと思う街」は実際に地価が上昇したのか!?

国土交通省が3月に発表した公示地価では、地価が上がっているところと下がっているところで分かれた動きになった。リクルート住まいカンパニーが、3月に発表した「2016年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング」では「今後、地価が値上がりしそうと思う街(駅)ランキング」を調査している。そこで、ランクインした街(駅)が実際に地価が上がったのか検証してみた。
武蔵小杉、豊洲、品川が2年連続トップ3

まず関東で地価が値上がりしそうと思う駅のランキングは表のとおり。上位10位のうち山手線の駅が4つランクインするなど、都心部の駅が目立つほか、タワーマンションなどの供給が活発化している再開発エリアも上位に入っている。1~3位の顔ぶれは昨年の調査と同じだった。

【表1】今後注目が集まり、地価が値上がりしそうと思う駅ランキング(関東全体/3つの限定回答)。および最寄り地点の公示地価上昇率(出典:ランキングはリクルート住まいカンパニー調べ、公示地価は国土交通省平成28年地価公示より)

【表1】今後注目が集まり、地価が値上がりしそうと思う駅ランキング(関東全体/3つの限定回答)。および最寄り地点の公示地価上昇率(出典:ランキングはリクルート住まいカンパニー調べ、公示地価は国土交通省平成28年地価公示より)

1位の武蔵小杉はまさにタワーマンションが林立しつつある街の代表格だ。2014年4月には「ららテラス武蔵小杉」、11月には「グランツリー武蔵小杉」が開業するなど、商業施設の新規オープンも相次いでいる。公示地価のデータはというと、武蔵小杉駅のある川崎市中原区の平均は住宅地が2.0%、商業地が4.1%と高い上昇率になっている。武蔵小杉駅の駅前広場に面する商業地は6.1%上昇した。

タワーマンションの集まる街といえば、2位の豊洲も定番だ。駅周辺の開発は一段落し、今は隣接する新豊洲駅や市場前駅などでマンションや商業施設の建設が進んでいるが、これらも広い意味で豊洲エリアといっていい。公示地価でみると、駅に近い豊洲4丁目の住宅地が8.0%アップと、まだまだ上昇の勢いは衰えていないようだ。さらに駅に近い商業地も3.1%上昇している。

3位の品川はリニア中央新幹線の開業のほか、2020年までの開業が予定されている新駅への期待度が高まっているエリアだ。同じ新駅がらみでは田町が6位、泉岳寺が20位にランクインしている。品川駅に近い港区港南2丁目の商業地は10.2%と2ケタの上昇。田町駅近くの港区芝5丁目の商業地は6.0%アップと、高い上昇率となった。さらに新駅予定地に最も近い港区高輪2丁目の泉岳寺駅最寄りの商業地は15.6%もアップしている。約50年ぶりとなる山手線の新駅開業の経済効果は相当なもののようだ。

立川、渋谷、清澄白河など急上昇した駅は地価も上昇傾向

前回調査から大きくランクアップした駅としては、4位の立川(前回12位)、7位の渋谷(同17位)、11位の清澄白河(同34位)などが挙げられる。立川駅周辺はIKEAなど大型商業施設が集積し、2014年には都心並みの坪単価で注目された駅直結のタワーマンション「プラウドタワー立川」が発売後まもなく完売するなど話題に事欠かない。駅北口の立川市曙町2丁目の商業地は8.9%の上昇だった。

再開発が進む渋谷駅周辺では、閑静な住宅地として知られる渋谷区松濤1丁目の住宅地が2.7%上昇した。また、ブルーボトルコーヒーなど海外発のカフェが相次いでオープンして話題の清澄白河駅近くでは、江東区清澄3丁目の商業地が2.5%のアップだ。

このほか、2015年にららぽーとが開業した海老名が5位、リニア中央新幹線の新駅開設が予定されている橋本が8位と、神奈川県内の街も健闘している。海老名駅の近くでは海老名市中央1丁目の商業地が3.5%の上昇。橋本駅周辺では相模原市緑区橋本3丁目の商業地が6.5%と、実際の地価も上昇傾向が強まっている。

関西は前年に続き梅田がトップ。公示地価の上昇もトップクラス

続いて、関西のランキングを見てみよう。

【表2】今後注目が集まり、地価が値上がりしそうと思う駅ランキング(関西全体/3つの限定回答)。および最寄り地点の公示地価上昇率(出典:ランキングはリクルート住まいカンパニー調べ、公示地価は国土交通省平成28年地価公示より)

【表2】今後注目が集まり、地価が値上がりしそうと思う駅ランキング(関西全体/3つの限定回答)。および最寄り地点の公示地価上昇率(出典:ランキングはリクルート住まいカンパニー調べ、公示地価は国土交通省平成28年地価公示より)

1位は前年と変わらず梅田だった。「うめきた2期」の街づくりが動き出し、阪神百貨店の建て替え工事がスタートするなど、再開発による整備が引き続き期待されるエリアだ。公示地価では駅至近の大阪市北区茶屋町の商業地がなんと32.1%アップ。この地点は全国の公示地価で6位の上昇率となっている。ちなみに全国トップは同じ大阪市の中央区心斎橋筋2丁目の商業地で45.1%アップしているが、残念ながら「今後、地価が値上がりしそうな街(駅)ランキング」では心斎橋はトップ10圏外だ。

続いてランキング2位の千里中央では駅隣接地で商業施設とタワーマンションの再開発が進み、北大阪急行の延伸計画もスタートしている。公示地価をみると、駅前広場に面する豊中市新千里東町1丁目の商業地が9.9%の上昇、駅北西に位置する同新千里西町2丁目の住宅地が2.3%の上昇となっている。

このほか、3位の万博記念公園では複合型商業施設EXPOCITYが昨年11月にオープン、6位の塚口では駅前再開発のZUTTOCITYが進行中、7位の神戸三宮では再整備に向けた取り組みが始まるなど、開発が進んで注目度がアップしている街がランクインしている。公示地価で確認すると、阪急塚口駅近くの尼崎市南塚口2丁目の商業地が1.2%アップ、神戸三宮に近い神戸市中央区三宮町1丁目の商業地が12.9%アップした。万博記念公園は最寄り地点で公示地価の調査が行われておらず、地価の動きは確認できなかった。

こうしてみると、ランキングの上位に上がった街では、実際に地価が軒並みアップしていることが分かる。三大都市圏では住宅地・商業地とも公示地価が平均で上昇しているが、上昇率の平均は住宅地が0.5%、商業地が2.9%なので、ここで紹介した街の多くは平均より高い上昇率だ。「今後、地価が値上がりしそうな街(駅)ランキング」の調査は、地価の専門家ではない一般の男女にアンケート調査で聞いたものだが、一般の人の地価に対する感覚も、なかなか鋭いものがあるようだ。

●参考
・2016年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版(リクルート住まいカンパニー)
・2016年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関西版(リクルート住まいカンパニー)
・土地総合情報ライブラリー(国土交通省)元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/109974_main.jpg

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浄水器のカートリッジ、ちゃんと換えている派が約6割も

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浄水器のカートリッジ、ちゃんと換えている派が約6割も

一般社団法人浄水器協会によると、全国の浄水器普及率は40.5%(2015年調査)。ただ、これらの世帯が、適切なメンテナンスをしながら使えているのかは疑問だ。そこで今回、SUUMOジャーナル編集部は、「浄水器アンケート」を行った。
約3世帯に1世帯がキッチンに浄水器を設置している

全国の300世帯を対象に、浄水器を設置しているかどうかや、手入れをしているかどうかを尋ねた今回のアンケート。まず、そもそも浄水器や浄水ポット(以降、まとめて「浄水器」とする)をキッチンに設置しているかどうかを尋ねる質問には、33.0%が「はい」と答え、約3世帯に1世帯が、キッチンに浄水器を設置済みであることが分かった。

さて、その、「設置率」に、エリアごとの違いはあるのだろうか? 首都圏や関西圏、主要な地方都市などの都市エリアと、それ以外の地域とで見ると、都市エリアに住む世帯の設置率が38.0%なのに対して、その他のエリアに住む世帯の設置率は30.5%と、都市エリアの方が設置率が高い傾向が見られた(図1参照)。

【図1】都市エリアの世帯のほうが、浄水器を設置している世帯の割合が約8ポイント高い(SUUMOジャーナル編集部)

【図1】都市エリアの世帯のほうが、浄水器を設置している世帯の割合が約8ポイント高い(SUUMOジャーナル編集部)

ただし、浄水器を設置していない世帯の人にその理由を尋ねたところ、都市エリアでも「特に水道水に問題を感じていない」という声がかなり見受けられ、その他のエリアでは「(その地域の水の)水質や味に誇りを持っている」という声が複数聞かれた。最近では、「水道水=まずい」というイメージが一般的かと思っていたが、水道水は思っていた以上に全国的に支持されているようだ。

Q.浄水器を設置していない理由は何ですか?(自由回答)

・水道水は別にまずくないし、余計なお金を掛けたくないから(神奈川県・男性)
・水道水で十分満足しているので(東京都・男性)
・福井の水はおいしい(福井県・男性)
・名古屋市の水道水はそのまま飲むのがおいしい(愛知県・男性)

コンパクトでラクに設置できる「蛇口直結型」浄水器が人気

浄水器を設置している人に、「どんなタイプの浄水器を設置していますか」と尋ねたところ、一番多かったのが、蛇口に取り付けるだけで使用できる上にコンパクトで場所を取らない「蛇口直結型」で、約6割と突出していた。次いで、カートリッジを取り換える頻度が1年程度で済む「据え置き型」が16.2%、設置の手間がかからず気楽に使える「ポット型浄水器(あるいは『浄水ポット』)」が12.1%で続いた。

Q. どんなタイプの浄水器を設置していますか(複数回答)

1位:蛇口直結型(62.6%)
2位:据置型(16.2%)
3位:ポット型浄水器(あるいは「浄水ポット」)(12.1%)
4位:水栓一体型(9.1%)
5位:元栓直結型(5.1%)
6位:分からない(1.0%)

カートリッジを定期的に交換しているのは約6割

浄水器は一定量の水をろ過すると寿命を迎えるため、定期的にカートリッジを取り換える必要があるが、浄水器を設置している世帯は、きちんとカートリッジを交換しているのだろうか? そこで「カートリッジを決められた時期に交換していますか?」と尋ねたところ、62.2%が「はい」と答え、約3世帯に2世帯が定期的にカートリッジを取り換えていることが分かった。

皆さん、意外と律儀に交換しているようだが、それはなぜなのだろうか?

Q.カートリッジを定期的に交換している理由を教えてください(自由回答)

・交換時期にピッピと鳴るようになっており、耳障りなのですぐに交換している(大阪府・女性)
・1年ごとに交換することになっているが、そこを敢えて11カ月で換えるように設定。交換時期をカートリッジに記入しておくので忘れずに交換できている(岡山県・女性)
・あとどのくらいで取り換え時期なのかが分かるカウントダウン方式の表示装置が浄水器についており、あらかじめ交換用のカートリッジを買っておくようにしているので、交換時期には常にカートリッジが手元にある状態だから(福島県・女性)

浄水器には、液晶で表示するなど、カートリッジの交換時期を知らせる工夫が施されているものが多く、そうした浄水器自体の進化のおかげで、使う側も適切な時期に交換する習慣が定着しているようだ。

また、定期的にカートリッジを交換している割合をエリア別に見たところ、都市エリアのほうが、まめに交換する世帯の割合が多い傾向が見られた(図2参照)。

【図2】都市エリアのほうが、カートリッジを定期的に交換している世帯の割合が10ポイントほど高い(SUUMOジャーナル編集部)

【図2】都市エリアのほうが、カートリッジを定期的に交換している世帯の割合が10ポイントほど高い(SUUMOジャーナル編集部)

カートリッジ交換のついでにほかのパーツもお手入れ

「浄水口などのパーツを定期的にお手入れしていますか?」というカートリッジ交換以外の手入れについての質問には、「はい」と答える世帯が49.0%、「いいえ」と答える世帯が51.0%と、答えがほぼ同数ずつに分かれる結果に。どうやらカートリッジ交換ほどまめには手入れをしていないようだ。

では、こうしたカートリッジ交換以外のお手入れは、どんな理由やタイミングで行うのだろうか?

Q. 浄水口などのパーツを定期的にお手入れしている理由を教えてください(自由回答)

・4カ月に1度のカートリッジ交換のときに、ついでに掃除をするようにしているので(埼玉県・女性)
・白いプラスチック部分は汚れが目に付くので、気付くたびに洗っています(愛知県・男性)
・ゴムパッキンが弱くなってきたなと思ったときにパッキン交換を行っている(熊本県・男性)

黒ずみやぬめりなどの汚れに気付いたときに必要に応じて洗うという声と共に、カートリッジ交換時、ついでに掃除をするという声も多く見られ、結果的に定期的な手入れができている世帯が多いことが分かった。

カートリッジには、活性炭などをはじめとするさまざまな仕組みのフィルターが使われているが、多くのフィルターは、時間がたつと吸着力が失われたり、カビが発生したり、不純物が溜まってしまったりする危険性をはらんでいるという。

しかも、不純物がフィルターに吸着し過ぎて、それ以上吸着できない状態になると、吸着効果がなくなるだけでなく、フィルターが目詰まりをおこし、浄水の水量が少なくなったり、ろ過する水に、フィルターに吸着していた物質が流れ出てしまったりする可能性がある。浄水器を使うことで、かえって逆効果となってしまうかもしれないのだ。それだけに、カートリッジを適切な時期に交換することは、どんなに面倒でも、浄水器を使う上では必要なメンテナンスと言えそうだ。

●調査概要
[水の使用に関する調査]より
・調査期間:2016年3月28日~2016年3月29日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:都市エリア(東京・千葉・埼玉・神奈川・京都・大阪・兵庫・奈良・仙台市・福岡市・札幌市・広島市)、その他エリアに居住する20代・30代・40代・50代以上の男女・有効回答数:300名(男性130名、女性170名)元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/04/110091_main.jpg

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